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政界ドン逮捕の後に辣腕の司法記者が耐えきれなくて泣いた理由

(19)金丸脱税事件

村山 治

 ロッキード事件、リクルート事件など戦後日本を画する大事件を摘発し、「特捜検察のエース」と呼ばれた吉永祐介元検事総長が亡くなって1年が経った。それを機に、吉永さんを長く取材してきた元NHK記者の小俣一平さんと元朝日新聞記者の松本正さんに、吉永さんと特捜検察、さらに検察報道の今と昔、それらの裏の裏を語ってもらった。東京佐川急便から金丸信自民党副総裁への5億円闇献金事件を取り調べなしの捜査で決着させたことで世論の批判を受け、窮地に陥った検察を救ったのは「盟友」の国税当局だった。連載第19回の本稿では、金丸さんを電撃逮捕した金丸脱税事件について振り返る。

●「青天の霹靂」だった金丸脱税事件

拡大金丸信・元自民党副総裁の逮捕を伝える1993年3月7日の朝日新聞朝刊
 村山:東京佐川急便事件の捜査、公判をめぐり世間の厳しい批判を受けて落ち込んだ検察に助け舟を出したのは、ロッキード事件での共同捜査・調査以来、盟友関係にあった国税当局でした。東京国税局が翌1993年1月、日本債券信用銀行(日債銀、現あおぞら銀行)が作成した、金丸さんの巨額蓄財の証拠となる資料を検察に提供したのです。
 検察側の窓口は、最高検の財政担当検事だった石川達紘さんで、実際の捜査を取り仕切ったのは特捜部長の五十嵐紀男さんでした。極秘で内偵を進めた特捜部が金丸信元自民党副総裁と元秘書の生原正久さんを電撃逮捕したのは1993年3月6日です。
 金丸さんの蓄財は数十億円にも上るとされました。金丸さんは、
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筆者

村山 治

村山 治(むらやま・おさむ) 

 徳島県出身。1973年、早稲田大学政経学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。2017年11月、フリーランスに。この間、一貫して記者。
 金丸脱税事件(1993年)、ゼネコン事件(93、94年)、大蔵汚職事件(98年)、日本歯科医師連盟の政治献金事件(2004年)などバブル崩壊以降の政界事件、大型経済事件の報道にかかわった。
 著書に「工藤會事件」(新潮社)、「安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル」(文藝春秋)、「市場検察」(同)、「特捜検察vs.金融権力」(朝日新聞社)、「小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争」(朝日新聞出版)、「検察: 破綻した捜査モデル」(新潮新書) 。共著に「ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか」(朝日新書)、「田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察『栄光』の裏側」(朝日新聞出版)、「バブル経済事件の深層」(岩波新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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