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三原じゅん子参院議員の「八紘一宇」に安倍首相「正直者がばかを見てはならない」

2015年3月16日、参院予算委員会のやりとり

 「国際調査報道ジャーナリスト連合」の取材によって明るみに出たルクセンブルク税務当局と多国籍企業などの間の課税に関する秘密合意の問題はこの3月16日、参院予算委員会(岸宏一委員長)で、自民党の三原じゅん子参院議員によって取り上げられた。麻生太郎・財務相は「他国における課税の話なので言及は控える」としながらも、「適正、公平な課税が損なわれるのは望ましくない」と答弁した。安倍晋三首相は「正直者がばかを見てはならない」と述べ、ベップス(BEPS、税源浸食と利益移転)対策に関するOECDのプロジェクトの年内のとりまとめに向けて「日本政府としてもしっかりとリーダーシップを発揮をしていきたい」と表明した。この質疑は、三原議員が「八紘一宇」という言葉を使ったことで話題になった。質疑の一問一答は以下のとおり。

▽一問一答のやりとりは国会会議録検索システムからダウンロードしたものです。下線はAJ編集部で引きました。

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3月16日の参院予算委員会で質問する三原じゅん子参院議員=飯塚晋一撮影
 ○三原じゅん子議員 前回もう一つ提起させていただいたのが、グローバル企業による租税回避問題であります。具体的には、アマゾン等の多国籍企業が我が国のインフラを利用して商売をしながらも我が国に法人税を納めていなかった、この点、また、インターネットを通じて電子書籍の販売あるいは音楽配信を行う場合、消費税が取れなかった点、これを指摘させていただきました。そして、これらを放置すれば、税のゆがみは国家のゆがみ、そのしわ寄せは最終的には個人など弱者にのしかかってくる、これはグローバル企業栄えて国滅ぶ事態になると、このように訴えさせていただきました。このうち後者については、やはり二十七年度税制改正大綱において、国外のサーバーからコンテンツをダウンロードした場合も消費税の課税対象とすることとされました。
 さて、これも大臣にお伺いしたいんですが、こちらにつきましても与党税制改正大綱の内容を踏まえて政府では具体的にどのような措置を講じる予定なのか、また、これによって税収が幾らぐらい増えるのかということも併せて教えていただきたいと思います。

 ○麻生太郎・財務大臣 ほぼ一年前の昨年の三月の十九日、調べてみますと、予算委員会で三原先生からこの問題についての御質問があっております。
 現行の消費税制におきましては、電子書籍、音楽、広告の配信等の電子商取引につきましては、消費税の課税対象であるか否かはサービスの提供者の所在地に着目をしていわゆる判断をするということにいたしております。そのため、サービスの提供者が国内事業者である場合には消費税は課税される、例えば書籍であれば紀伊国屋は課税されると。傍ら、サービスの提供者が国外の事業者である場合、アマゾンなんかはそうでしょうけど、その場合には消費税が課税されない。つまり、同じ取引であってもサービス提供者によって課税関係が異なって、国内外の事業者間の競争条件にゆがみが生じている。
 現在国会で御審議をいただいております税制改正法案、先週十三日に衆議院を通過しておりますが、こうした国内外の業者間の競争条件の不均衡を是正するという観点から、消費税の課税対象となるか否かをサービスの提供を受ける人、受ける側の所在地に着目をして判断をすることということにして、国内外の事業者が国境を越えて行う電子商取引につきましては消費税を課するということにいたしております。
 これでどれくらいのものになるかということにつきましては、ちょっとまだ正確なものができ上がっておりませんので、もう少々時間をいただければと存じます。

 ○三原じゅん子議員 ありがとうございます。
 実はこの二つの問題、大臣おっしゃっていただいたように、一年前この予算委員会で私質問させていただいた後、産業界を始め本当に各方面の、多方面の方々から大きな反響がありました。とある財界の方は、三原さんの言っているのは正論だけど、これは一筋縄ではいかない難しい問題なんだよというような、大半の方がそのような御指摘をしてくださいました。しかしながら、それが僅かこの一年間で法改正が実現したというのは、これはまさに与党と安倍政権の実行力のたまものではないかと、私はそのように考えているところでございます。こういった成果を改めて今日は国民の皆様方に御報告をさせていただきたいと思っております。
 さて、今回は、その租税回避の根本問題についてお話をさせていただきたいと思います。
 企業による租税回避行為の代表的なものといたしまして、コーポレートインバージョンというものがあることは皆様方承知のことと思います。企業が合併によってその本社をより税率の低い国に移して税の支払を軽減するという、こういった行為であります。これに関しては、欧米諸国、我が国でももう既に防止措置がとられてきておりますが、しかし、さらに、別の税制の抜け穴をつく形で、例えば日本企業とアメリカ企業が合併して、そして第三国であるオランダなど、より税率が低い国に親会社を設立して税金の支払を減らすといったコンビネーションインバージョン、こういうなるものが登場をしてきたわけであります。
 そもそも、一般的な認識として、我が国には意図的にこういった租税回避をするような企業は私は余りないのではないかなと思っていました。しかし、グローバル化の影響というのもあったのかもしれませんが、海外投資家の持ち株比率というのが、九〇年には四%だったものが一三年には三〇・二%にまで増えております。それ自体は歓迎すべきことなんだと思いますが、その外国人の株主の皆様方からの利益の最大化、こういったものを求める圧力というものも強まるなどして、我が国の企業の振る舞いというのでしょうか、こういったことも少しずつ変化をしてきているのではないかなと、このように思えてなりません。
 さて、そして、その租税回避問題は、もはや伝統的な企業対課税当局、こういう単純な図式ではなくなってきております。投資銀行、弁護士、公認会計士、税理士など、いわゆる租税回避を、戦略を立案して、もはや生易しい節税レベルというのではない、もうはるかに超える、商品としてそれをグローバル企業に売るプロモーターと税務当局との知恵比べという状況にあるのではないかと思っております。
 昨年十一月、タックスヘイブンの一つと言われるルクセンブルクの税務当局が三百以上のグローバル企業と取り交わした課税に関する非公開の合意文書の存在というのが国際ジャーナリスト集団によって明らかにされました。国境を越える出資や融資にルクセンブルクの企業を介在させて税額を抑える仕組みというのが白日の下にさらされたわけです。これは全部で二万八千ページにも及ぶという文書でございます。これが何と大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース、PwCが作成したものとされて、その多くに税務当局の担当者の印が押されていました。つまり、プロモーターであるPwCと顧客であるグローバル企業、そしてルクセンブルクの税務当局、この三つが密約を交わして、ぐるになって租税回避を行っていたという、これ大変ショッキングな内容でございました。
 麻生大臣、こうしたタックスヘイブンとグローバルな会計事務所の動きについて、我が国にも提携する税理士法人があるようでありますけれども、これは氷山の一角なのではないかなと思えてなりません。所管の財務大臣としてどのようにお考えでいらっしゃるでしょうか。
 そしてまた、こうしたプロモーターの動きについて、OECDやG20、こういう場で何か対抗措置のようなものが検討されているのかどうか、こういうことについてもお伺いをしたいと思います。

 ○麻生太郎・財務大臣 このプライスウォーターハウスクーパースというのは、これは結構でかい公認会計事務所が、簡単な

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