2015年05月07日
▽筆者:加藤裕則、桑原紀彦
▽この記事は4月23日の朝日新聞の社会面や宮城版に掲載された原稿を一つにまとめ、加筆・再構成したものです。
▽関連資料:2014年2月25日に仙台地裁で言い渡された一審判決の全文を掲載した裁判所ウェブサイトへのリンク
▽関連資料:2015年4月22日の仙台高裁で言い渡された控訴審判決の全文
控訴審で遺族が強く訴えたのは、「なぜ支店を避難場所に追加指定したのか」という点だ。
女川支店では従来、避難場所として260メートル先で病院もある堀切山を避難場所に指定していたが、銀行が2009年に災害対応プランを見直し、その中で女川支店では支店屋上を避難場所に追加した。結果的に東日本大震災発生直後、支店長は屋上を避難先に選んだ。
遺族は「追加指定が誤った判断を導いた」と批判した。遺族は、国の津波避難ビルに関する指針をもとに、「避難場所にビルを指定するのは、背後に避難に適さない地形がある場合」と指摘した。そのうえで「追加指定は行員の安全確保にとってマイナスだった」と主張し、「人命よりも資産や業務を優先したのでは」と疑問を投げかけ、「支店長の誤った判断を導いた」として銀行の安全配慮義務違反と主張した。
事前の予見可能性については、津波の具体的な高さが問題ではなく、津波が襲来して行員や支店に被害が及ぶことが予想されれば成り立つと主張した。
これに対し、銀行側は宮城県の津波予想の最高水位が5.9メートルで、「金融機関は災害の専門家ではない」として予想が不可能だったと強調した。そのうえで、「すぐに津波が来るかもしれない。地震でけがをするかもしれない」など様々な状況に対応するには追加指定は「正しい対応」と主張した。また、「地震直後は時間的にも緊迫していた」とし、屋上へ避難した判断も間違いではなかったとする。
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