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投資家vs.国家の紛争を解決するためのTPPのISDS条項

太田 洋

 12カ国、8億人の巨大市場でビジネスがしやすくなる、とされる環太平洋経済連携協定(TPP)。海外進出企業の投資を守るルールも導入された。進出先の政府の不当な規制で損害が発生したときは、中立的な仲裁裁判所等に訴えて当該政府に賠償を求められる「ISDS条項」だ。グローバル展開している日本企業にとって強力な武器となることも間違いない。太田洋弁護士が、TPPや2国間EPAなどに盛り込まれているISDS条項の概要と実務上の留意点を解説し、有効活用を提言する。

 

ISDS条項の意義とその利用可能性
―関税撤廃・関税率引下げだけではないTPP―

西村あさひ法律事務所
弁護士・ニューヨーク州弁護士 太田 洋

太田洋弁護士太田 洋(おおた・よう)
 1991年、東京大学法学部卒業、1993年に弁護士登録(司法修習45期)。2000年、ハーバード・ロースクール修了(LL.M.)、2001年に米国NY州弁護士登録。2001年~2002年に法務省民事局付(参事官室商法改正担当)、2007年に経済産業省「新たな自社株式保有スキーム検討会」委員。現在、東京大学大学院法学政治学研究科教授、西村あさひ法律事務所パートナー、金融庁金融審議会専門委員、総務省個人情報・利用者情報等の取扱いに関するWG構成員。
 2015年10月5日、難産の末に、TPP協定(Trans-Pacific Partnership Agreement。いわゆる環太平洋パートナーシップ協定)が、遂に大筋合意に至り、本年2月には交渉参加各国による署名式が行われる予定であると報じられている。TPP協定は、従来からWTOや2国間FTA等でなされてきた物品についての関税の撤廃や引下げだけでなく、サービス貿易の障壁の排除、非関税分野での共通ルールの構築等の内容を含んでおり、その意味で21世紀型の新しい貿易・投資ルールを構築することを企図したものである。これによって、環太平洋地域において、ヒト・モノ・資本・情報のすべてが自由に行き交う巨大な経済圏が誕生することが期待されている。

 TPP協定というと、マスコミ報道では、とかく農産物や自動車・自動車部品等の関税撤廃や関税率の引下げだけがクローズ・アップされがちであるが、TPP協定には、知的財産権の取扱いについて定めた知的財産章や「投資家対国家間の紛争解決条項」(いわゆるISDS条項)を定めた投資章など、一般の企業の経済活動にも影響を及ぼし得る内容も数多く含まれている。

 このうち、ISDS条項は、既に日本が締結済みの2国間経済連携協定(いわゆるEPA)(但し、日豪EPA除く。また、日マレーシアEPA、日シンガポールEPAでは一部適用除外項目あり)、2国間投資協定、及びエネルギー憲章条約(2015年6月時点で日本を含む48か国とEUが締結)において、既に規定されていたものであり、これを有効に活用すれば、日本企業が海外投資をする際、投資先の国の政策変更等によって不測の損害を被ることを回避又は事前に抑止することも可能となり得る。

 そこで、本稿では、TPP協定に含まれる数多くの条項のうち、グローバルに事業を展開するわが国企業にも大きな影響を及ぼす可能性があるISDS条項について、その概要と実務上の留意点を簡単に解説することとしたい。なお、本稿は、2015年11月5日に公表されたTPP協定の暫定案文等(以下、単に「暫定案文」ということがある)及び同25日に決定されたTPP総合対策本部「総合的なTPP関連政策大綱」に依拠した、いわば「速報」的なものであり、現時点では推測に基づく内容も含まれざるを得ないことに留意されたい。

1 TPPとISDS条項

 TPP協定の交渉には、本稿執筆時(2016年1月3日)時点で、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国及びベトナムの合計12カ国が参加している。この他に、韓国が参加を検討し、フィリピン、インドネシア、タイ、台湾、コロンビア、コスタリカも関心を示しているとされている。もっとも、TPP協定への参加には、既参加国による承認が必要とされている。

 TPP協定の暫定案文は、全30章から成るが、そのうち第9章(投資章)がISDS条項(Investor-State Dispute Settlement Clause:投資家対国家間の紛争解決条項。「ISD条項」と呼ばれることもあるが、ISDS条項と呼ぶ方が正確である)について定めている(暫定案文第9章第B節)。

 ISDSとは、「投資家対国」の紛争処理手続のことであり、この制度が条約に定められている場合、ある締約国の投資家が、直接、他の締約国の政府を相手として国際仲裁等を申し立て、勝訴した場合には賠償を得ることができる。条約にISDS条項が盛り込まれている場合、投資家は、①ICSID条約(Convention on the Settlement of Investment Disputes between States and Nationals of Other States)、②ICSID追加的利用手続(Rules Governing the Additional Facility for the Administration of Proceedings by the Secretariat of the International Centre for Settlement of Investment Disputes。ICSID条約非締約国又は非締約国の国民との投資紛争の場合に利用できる紛争解決手続である)、③UNCITRAL仲裁規則(Arbitration Rules of the United Nations Commission on International Trade Law)など、当該ISDS条項で指定されている仲裁規則のいずれかに基づく仲裁を選択することができ、選択後は、その仲裁規則に従って国際仲裁手続が進められる。ちなみに、TPP協定では、上記①から③までの仲裁規則のいずれか、又は、両当事者が合意した場合にはその他の仲裁規則に基づく仲裁を選択できるものとされている(暫定案文9.18条4項)。なお、上記①のICSID条約に基づく仲裁手続では、ワシントンに置かれている国際投資紛争解決センター(International Center for Settlement of Investor Disputes。世界銀行傘下の組織である)に対して仲裁申立てを行うことになるが、上記③のUNCITRAL仲裁規則に基づく仲裁手続では、手続がUNCITRAL仲裁規則に従うというだけであって、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)が仲裁手続に関与するわけではない。

 TPP協定の暫定案文には、内国民待遇(暫定案文9.4条)、最恵国待遇(暫定案文9.5条)、国際慣習法上の原則に基づく待遇(暫定案文9.5条)等の投資家及び投資財産を保護する義務が定められているが、TPP協定を含む国際条約は、国家と国家との国際的な約束であって、必ずしも当然に国内的効力が認められるわけではない(もっとも、日本では、憲法98条2項により条約には国内的効力が認められており、国内法よりも優位性が認められるものと解されている)。また、仮に条約に国内的効力が認められるとしても、条約の具体的な条項を裁判所が適用するためには、当該条項が国内への適用可能性のあるものでなければならず、かかる国内適用可能性について解釈する権限は各国にあるとされる。そのため、上記の各保護義務が国際条約に定められていても、必ずしも条約締約国の国民に対して直接的に権利を付与するものではないともいえる。しかしながら、EPAや投資協定、TPP協定などの国際条約の中にISDS条項が盛り込まれていれば、企業その他の投資家自らが、直接、投資受入国による投資家保護義務違反を国際仲裁等によって争うことが可能となる。この点、国際仲裁を含む仲裁の付託に際しては、本来、紛争当事者間の合意が必要であるが、条約にISDS条項が盛り込まれている場合、当該条項は、投資受入国による「仲裁付託の事前の合意」として機能する。即ち、ISDS条項が存在する場合、投資家は、投資受入国との間の紛争を国際仲裁に付託するに際して、当該投資受入国の同意を取得する必要がない(例えば、TPP協定の暫定案文9.19条は、各締約国は、本節の規定による仲裁への請求の付託に同意する旨を規定している)ということになる(もっとも、その他の管轄要件は充たす必要がある)。

 そして、TPP協定には、上記のとおりISDS条項が盛り込まれているため、日本企業を始めとするTPP協定締約国の企業が、他のTPP協定締約国に対して投資を行っている場合において、当該投資先の国が、TPP協定が定める内国民待遇、最恵国待遇、国際慣習法上の原則に基づく待遇等の投資家及び投資財産を保護する義務に違反する措置を講じた場合には、それら投資家は、基本的に、自ら、当該投資先の国によるそれらの義務違反を前述したICSID条約に基づく仲裁手続その他の国際仲裁手続を通じて争うことができるわけである。要は、わが国の企業が、他のTPP協定締約国に投資を行っている場合において、当該投資先の国が、投資家保護に関する義務に違反して、当該企業に対して、内外差別や違法な収用などの不利益な取扱いを行ったときは、当該企業は、自ら当該投資先の国の政府を相手取って国際仲裁を申し立てることができるということである。特に、①企業や工場等の国有化のような直接的な財産権の没収ないし収用の場合だけではなく、②規制の導入や変更によって収用と同様の損害を被る場合や、投資家の期待した利益が損なわれるような場合、更には、③許認可を不当に剥奪された場合や、④投資先の国の政府により不当に契約を解除された場合等についても、ISDS条項による仲裁申立ての対象となり得るので、当該条項は、TPP協定締約国に進出している(又は進出する)わが国企業にとっては、外国企業を狙い撃ちした規制や行政措置等によって自らの投資が毀損されることを防止するための有力な武器となり得る。

 なお、TPP協定で定められている投資家保護に関する義務としては、実務上、(i)収用及び補償に関する規制のほか、特に、(ii)公正衡平待遇義務(=投資家の投資実行時の合理的期待を害さない義務)及び(iii)特定措置の履行要求の禁止(投資受入国における投資活動の条件として、現地調達、現地人雇用、技術移転、特定技術使用等の要件を課すことや特定のロイヤリティ率の採用を義務づけることの禁止)が重要ではないかと思われる。もっとも、このうち(iii)に関しては、多くの場合、現在存在する規制が各締約国によって留保(協定上の義務違反にならない)の対象とされ、「特定措置の履行要求禁止」の適用が除外されているため、実際には、投資家が、ISDS条項に基づいて、投資先の国の「特定措置の履行要求の禁止」義務違反を国際仲裁手続で争うことは容易ではない点に注意が必要である。

2 ISDS条項を利用するメリット

 ISDS条項を利用する法的メリットとしては、前述のとおり、①国際仲裁を利用できるため、紛争解決手段の判断の中立性及び公正性を確保することができること、及び、②仲裁付託に際しては、本来は紛争当事者間の合意が必要であるところ、ISDS条項が投資受入国の仲裁付託の事前の合意としても機能する(即ち、投資受入国は仲裁付託を受け入れざるを得なくなる)ことが挙げられる。

 また、実務上は、ISDS条項が、投資スキームを決定する際の考慮要素ともなり得る。例えば、投資受入国との間に、TPP協定のようにISDS条項が盛り込まれた条約が締結されている第三国の子会社を通じて投資を行うことによって、ISDS条項に基づく国際仲裁等を利用できるようにすることなども考えられる。但し、TPP協定においては、親会社が非締約国所在の企業であり、締約国内で実質的な事業活動を行っていない場合には、その投資財産についてISDS条項等の適用を否定することができる旨の規定(暫定案文9.14条)が存在する点には注意が必要である。

 更に、投資受入国にとっては、国際仲裁手続に応じざるを得ないことは負担となるため、投資家としては、ISDS条項に基づいた紛争解決の意向を投資受入国の政府にちらつかせることが、当該投資受入国の政府との間における合意による紛争解決に向けた交渉のレバレッジとして機能することもあり得るであろう。

 他方で、ISDS条項に関しては、国家の正当な規制権限の侵害や濫訴の誘発といった懸念も指摘されている。そのため、TPP協定には、違反が発生したことを知った日等から3年6か月が経過した場合には、仲裁への請求の付託をすることができない(暫定案文9.20条)等の濫訴の抑制のための規定も設けられている。従って、TPP協定の下で、ISDS条項の利用が考えられる場合には、その利用可能性について、速やかに検討を行う必要がある。

3 TPPによるISDS条項の利用可能性の拡大

 なお、ISDS条項は、前述のとおり、日豪EPAを除くわが国が締結済みの経済連携協定(EPA)、投資協定及びエネルギー憲章条約には既に盛り込まれているが、TPP協定締約国のうち米国、カナダ及びニュージーランドの3か国はわが国との間でEPAを未締結であるため、これら3か国との間では、TPP協定が初めてのISDS条項が盛り込まれた条約ということになる。また、日豪EPAにはISDS条項が盛り込まれていないため、豪州との間では、やはりTPP協定が初めてのISDS条項が盛り込まれた条約ということになる。

 したがって、これらの国に対して日本企業が投資をする場合には、TPP協定上のISDS条項に基づいて、それらの国の投資家保護義務違反を争うことができるようになる。

4 日本企業によるISDS条項の活用

 ISDS条項については、日本企業の間には、投資先の国と事を構えると、係争案件以外の事業展開に支障を来しかねないのではないかとして、投資先の国から撤退する場合でないと活用は難しいのではないかという声があるようである。しかしながら、米国、オランダ、英国企業など欧米企業は、株主利益の観点から、ISDS条項の活用には積極的である。例えば、「マールボロ」で知られる米フィリップ・モリス・インターナショナルは、豪州政府が導入したたばこの「プレーンパッケージ法」(たばこの箱に健康被害を警告する画像や文言を入れることを義務付け、ロゴ等を表示することを禁じている)が、商標など同社の知的財産権を侵害するとして、2011年、香港子会社を通じ、香港・豪州投資協定に盛り込まれているISDS条項に基づき、豪州政府に対してUNCITRAL仲裁規則(2010年版)に基づく仲裁手続を常設仲裁裁判所(PCA)に申し立てている(もっとも、2015年12月17日、同裁判所は、3名の仲裁人の全員一致により、管轄不存在を理由に豪州政府勝訴の仲裁判断を下した)。また、ロシア政府に資産を没収された露ユーコス社の株式の60%を所有していた元株主5名は、海外法人(GML Ltd.)を通じて、エネルギー憲章条約に盛り込まれているISDS条項に基づき、ロシア政府に対する国際仲裁をオランダのハーグに所在する常設仲裁裁判所に申し立て、同裁判所は、2014年7月28日、総額約50億ドル(約6兆円)の賠償金(投資協定に基づく仲裁判断としては過去最高の賠償金額)を支払うよう、ロシア政府に命じている。

 ちなみに、UNCTADによる統計では、公表されたものだけでも、1987年から2014年の間にISDS条項に基づいて国際仲裁がなされた事例は累計で608件に上り、単年度でも、2014年には42件、2013年には59件、2012年には54件の仲裁申立てがなされている。なお、仲裁を申し立てられた国を国別にみると、1位はアルゼンチン(56件)、2位はベネズエラ(36件)、3位はチェコ(29件)である。

 したがって、グローバルに事業を展開する日本企業としても、投資先の国において、TPP協定、2国間EPAないし投資協定などの国際条約に定められた投資家保護義務違反の行為等があったために大きな損害を蒙り、かつ、ISDS条項を利用できるのであれば、株主利益の観点からも、少なくとも、法律専門家の助言を得ながら、ISDS条項に基づく国際仲裁の申立てを行うべきか否かを真剣に検討すべきであろう。日本企業は一般に、訴訟や仲裁手続を利用すること自体に消極的であり、ましてや、外国政府と事を構えることに対しては非常に臆病であるが、グローバルにビジネスを展開する以上、他国のグローバル企業と同じような行動に踏み込んでいかないと、熾烈な国際競争を勝ち抜いていけないことを肝に銘ずべきであろう。少なくとも、前述のとおり、ISDS条項の利用を真剣に考慮していることを投資先の国の政府に示すだけでも、当該国の政府との間の交渉に際して、大きなレバレッジとなるのではないかと考えられ、その意味でも、当該国において国際条約に定められた投資家保護義務違反の行為等があったために大きな損害を蒙ったような場合には、投資家企業の取締役としては、株主から善管注意義務違反の責任を問われないようにするためにも、ISDS条項に基づく国際仲裁の申立ては可能であるのか、可能であるとして申立てを行うことが得策か否かの検討だけは行っておくべきであろう。

 実際にも、TPP協定上のISDS条項に基づくものではないが、日本企業が、投資協定等に盛り込まれたISDS条項を活用して、投資先の国の政府に対して国際仲裁を申し立てた(ないし申立て寸前までいった)事例が、現在までで少なくとも3例存在する。

 第一の事例は、Saluka Investments BV v. Czech Republic 事件(UNCTRAL Partial Award, 17 March 2006)である。この事件では、野村證券の欧州子会社がオランダに設立したSaluka社が、オランダ・チェコ投資協定に盛り込まれていたISDS条項を利用して、チェコ政府に対する仲裁申立てを行った。即ち、この事案において、Saluka社は、民営化されたチェコの旧国営銀行(X銀行)の株式の46.16%を保有するために設立された持株会社であったところ、チェコ政府は、他の3つの旧国営銀行に対しては財政支援を行ったにも拘らず、Saluka社の投資先であるX銀行には財政支援を行わず、その結果、X銀行は経営悪化の果てに公的管理下に置かれ、最終的に、Saluka社は、チェコ政府から、保有するX銀行の株式を別の旧国営銀行に譲渡するよう命令を受けた。かかる事案に関して、仲裁廷は、チェコ政府が、Saluka社がその株式を保有していたX銀行に対してのみ、他の旧国営銀行に対して行った財政支援を行わなかった取扱いは、オランダ・チェコ投資協定3条1項に定められた「公正衡平待遇義務」違反に当たると判断した。

 第二の事例は、日本アサハンアルミニウム(NAA)のインドネシアからの撤退を巡る係争の事例であるが、この事案では、2013年10月、NAAが、インドネシア政府に対して書簡を送付し、NAAとインドネシア政府との合弁会社(インドネシア所在)の株式評価に関する紛争について、ICSIDの仲裁手続によって解決する意向がある旨を伝えたところ、最終的には、仲裁判断に至ることなく、インドネシア政府との交渉により、NAAが保有する当該合弁会社の株式を、同政府に対して(同政府が一方的に決定した価額ではなく)約570億円にて売却するとの合意に至っている(2013年12月合意文書に調印)。

 第三の事例は、日揮とスペイン政府との間の再生可能エネルギー買取制度の変更を巡る係争の事例である。この事案では、スペイン政府が2004年から太陽光発電促進のために電力買取制度を発電事業者に有利に改定して外資誘致に取り組んでいた状況を前提に、日揮が、2012年から現地企業と組んでスペイン南部のコルドバ市近郊において太陽光発電設備を稼働させていたところ、同政府が電力の買取価格引下げなど投資家に不利な条件変更を相次いで行ったため、日揮が、2015年6月に、エネルギー憲章条約に盛り込まれていたISDS条項に基づき、スペイン政府を相手取って、国際投資紛争解決センターに仲裁を申し立てている。

5 終わりに

 以上で述べたとおり、TPP協定に盛り込まれたISDS条項は、グローバルにビジネスを展開する日本企業にとっても、同協定締約国である投資先の国において、同協定所定の投資家保護義務違反の行為等があったために大きな損害を蒙ったような場合には、損害回復のための大きな武器となり得るものであり、株主利益の観点からも、その利用可能性については予め十分に検討を尽くしておくべきである。

 また、ISDS条項は、TPP協定だけでな

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