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トランプ政権で「ひどい法律」「米企業に不利」米海外腐敗行為防止法はどうなるか?

米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の贈賄禁止条項の域外適用(上)

宮本 聡

 「米国第一」を唱え、オバマ政権時代の通商、移民政策などを見直すと公言してきたトランプ氏が米国大統領に就任。日本をはじめ米国外企業の外国公務員への贈賄行為を厳しく取り締まってきた米国の海外公務員腐敗防止法(FCPA)の域外適用方針が見直されるのではないか、と企業関係者の関心を集めている。トランプ氏や新しく米証券取引委員会委員長に指名された人物がかつて「FCPAは米国企業に不利になる」と表明していたからだ。宮本聡弁護士が、域外適用を制限する判断も出始めた米国司法の最新状況も踏まえ、トランプ政権による方針転換の可能性を2回に分けて探る。1回目は、米国の判例をもとに域外適用に対する積極、消極の両論の根拠を中心に解説する。

 

重要な岐路に立つ、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の贈賄禁止条項の域外適用 ~トランプ政権は域外適用制限の動きを加速させるか~ (上)

 

西村あさひ法律事務所
弁護士 宮本 聡

 1 はじめに

宮本 聡(みやもと・さとし)
 2007年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2009年東京大学法科大学院修了、2010年弁護士登録。2011年1月西村あさひ法律事務所入所。入所以来、企業不祥事対応等の危機管理案件、訴訟案件、一般企業法務案件などに従事。現在ボストン大学ロースクールに留学中。
 2012年(平成24年)5月15日、米国CNBCのニュース番組において、のちに米国第45代大統領になるDonald Trump氏(以下「トランプ氏」という。)は、ウォルマートのメキシコ子会社で起きた米国海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act。以下「FCPA」という。)違反の疑惑について、次のとおり発言した(以下、これらの発言をまとめて「トランプ氏発言」という。)(注1)

  “This country is absolutely crazy. They prosecute people for going over to China and Mexico and other countries and getting business and creating jobs in this country・・・” (この国(米国)は絶対におかしい。中国、メキシコ、その他の国々に行き、ビジネスを獲得し、米国に仕事をもたらす行為について、訴追をするのだ。) (注2)

  “Let Mexico or let China or let these other countries prosecute. Why are we prosecuting people to keep China honest?” ((贈賄行為は)メキシコ、中国、その他の国々に訴追させればよい。なぜ、我々は、中国の公正さを保つために(贈賄行為の)訴追をしているのか。)

  “It’s a horrible law and it should be changed.” ((FCPAは)ひどい法律であり、変えるべきだ。)

  “It puts us at a huge disadvantage.” ((FCPAは)我々を非常に不利な立場に追いやっている。)

  また、トランプ氏は、2017年(平成29年)1月4日、米国証券取引委員会(SEC)の次期委員長に、弁護士のJay Clayton氏(以下「クレイトン氏」という。)を指名すると発表した。クレイトン氏は、過去にニューヨーク市弁護士会の国際商取引委員会(Committee on International Business Transactions)において、FCPAが米国の企業等に不当な負担を課している旨述べたレポートの作成に関与したことのある人物である(注3)

  FCPAは、贈賄禁止条項(anti-bribery provisions)と、会計・内部統制に関する条項(accounting provisions)により構成される米国の連邦法である。贈賄禁止条項は、米国以外の公務員等(以下「外国公務員等」という。)に対する贈賄行為等を規制対象とし、オバマ政権下では、積極的に米国外への適用(以下「域外適用」という。)が行われた。実際に日本企業が贈賄禁止条項違反として、米国司法省(DOJ)に摘発された例をご存じの方も多いだろう。

  贈賄禁止条項の積極的な域外適用の流れは、次の2つの理由から、現在大きな岐路を迎えつつある。第1の理由は域外適用を強力に制限する裁判例の登場、第2の理由はトランプ氏の大統領就任に伴う政権交代である。本稿では、2回にわたり、贈賄禁止条項の域外適用の拡張と制限の動きとともに、上記2つの理由を紹介、検討する。

 2 贈賄禁止条項の域外適用拡張の3つの根拠

 FCPAの贈賄禁止条項の域外適用については、拡張を支える3つの根拠(属人主義と属地主義、agent、共犯理論等の3つ)と、拡張を制限する3つの根拠(属地主義要件の厳格解釈、人的管轄権、域外適用否定の推定則の3つ)が存在する。なお、贈賄禁止条項の域外適用制限の根拠に触れた日本語の論文等は少ないが、例えば、木目田裕「米国 FCPA(外国公務員贈賄防止法)や英国 Bribery Act の域外管轄」西村あさひ法律事務所危機管理ニューズレター2015年(平成27年)5月号(注4)が存在する。

  本項では、まず、域外適用拡張の3つの根拠を紹介する。

  FCPAの贈賄禁止条項は、外国公務員等に対する利益供与等を促進するメールその他の州際通商の手段等を、腐敗の意図をもって用いる行為(以下「贈賄行為等」という。)を禁止対象としている(注5)

  そして、贈賄禁止条項の適用対象は、①米国で有価証券を上場している者等、及びその役員、従業員等(issuers。以下「発行者等」という。)、②米国の国内企業、及びその役員、従業員等、並びに米国国籍保有者(domestic concerns。以下「国内関係者等」という。)、③贈賄行為等を米国の領域内において(while in the territory of the United States)行った者の3種類に分かれる。①②は行為者の属性(米国と強いつながりのある者)に着目して適用対象を決める「属人主義」という考え方、③は行為の「場所」(米国内)に着目して適用対象を決める「属地主義」という考え方にそれぞれ基づいている。このように、贈賄禁止条項は、「属人主義」と「属地主義」の両方を採用することで、米国外の贈賄行為等への適用(域外適用)が可能となっている。これが、域外適用拡張の根拠の1つ目である。

  域外適用拡張の根拠の2つ目は、agentである。FCPAの条文上、上記①②③の者のagentも、贈賄禁止条項の適用対象となる。agentか否かは、通常支配(control)の有無により判断される。例えば、発行者等である米国企業の100%子会社である日本企業の代表者(日本国籍保有者)が、日本国内において日本の公務員に贈賄をした場合、発行者等のagentによる贈賄行為として、贈賄禁止条項の適用対象になり得る。

  域外適用拡張の根拠の3つ目は、共犯理論(共謀罪、教唆、幇助)等の適用である。これによって、処罰(域外適用)の範囲はさらに広まり得る。例えば、発行者等、国内関係者等、それらのagentのいずれにも該当しない日本国籍保有者が、米国国籍保有者と共謀して、日本国内で日本の公務員に対する贈賄行為等をした場合、当該日本国籍保有者は、贈賄禁止条項違反の共謀を理由に処罰対象となり得る(このような事例に対する処罰の適否については、本稿後半(次回)において触れる予定である。)。なお、共犯理論のほかに、郵便・通信詐欺(Mail & Wire Fraud)の適用による処罰もあり得るが、これについては、本連載の荒井喜美弁護士による論考(荒井喜美「米司法省のトヨタ摘発でも使われた「郵便・通信詐欺」とは何か(注6))で説明されているため、本稿では同論考を紹介するにとどめたい。

  以上のとおり、贈賄禁止条項の域外適用拡張の根拠には、属人主義と属地主義、agent、共犯理論等の3つが存在する。これらの根拠によって、例えば、発行者等でも国内関係者でもない者が米国外で行った贈賄行為等までが、贈賄禁止条項の適用対象となり得ることになる。

 3 贈賄禁止条項の域外適用が行われやすい構造的な理由

 FCPAの贈賄禁止条項の域外適用は、上記2の域外適用拡張の3つの根拠に基づき、オバマ政権下で広く行われてきた。

  他方で、これまで贈賄禁止条項の域外適用の是非について米国裁判所が判断を下すことはほとんどなかった。その大きな理由の一つは、贈賄禁止条項違反として摘発を受けた事例の多くが、裁判所の終局判断を経ることなく、米国司法省と違反行為者との間で締結される訴追延期合意(Deferred Prosecution Agreement。以下「DPA」という。)、あるいは、訴追免除合意(Non-Prosecution Agreement。以下「NPA」という。)と呼ばれる合意によって解決されるからである(注7)。DPAやNPAにおいては、違反行為者側が一定の制裁金を支払うことや、違反行為の再発を防止するための体制を構築することなどが約束される。日本企業が贈賄禁止条項違反についてDPAを締結した例をご存じの方もおられるだろう。

  DPAは、形式上は、違反行為者を起訴した後にDPAを裁判所に提出するという手続を踏むため、その内容を裁判所が目にする機会自体は存在する。しかし、DPAの内容については訴追側(司法省)に大きな裁量が認められており、裁判所がその内容を実質的に審査し、無効を宣言することは原則としてない。また、NPAはそもそも裁判外で締結されるため、手続上、裁判所の関与は予定されていない。

  もちろん、贈賄禁止条項違反の嫌疑をかけられた企業等は、DPA、NPAの締結には応じず、裁判を通じて訴追側の主張を争う選択肢も存在する。しかし、勝訴の不確実さ、裁判にかかるコスト、敗訴した場合に発生する様々なリスク(許認可等への影響やレピュテーションリスク等)などを踏まえると、DPA、NPAを締結せず、裁判所で域外適用の是非等を争うという決断を下すことは容易なことではないだろう。

  以上のとおり、(ア)域外適用等の法的問題に争いのある事案であっても、裁判所の終局判断によらずに訴追側(米国司法省等)との合意で事件を解決する余地があること、(イ)贈賄禁止条項違反の嫌疑をかけられた企業等は、訴追側の主張に不満がある場合でも、その主張どおりに違反行為を認め、DPAやNPAの締結に応じる場合が十分あり得ること、(ウ)((ア)(イ)の結果)贈賄禁止条項の域外適用に関する裁判例が極めて少ないことなどが、積極的な域外適用を訴追側が追求しやすい構造を生んでいる。贈賄禁止条項の域外適用は、本来法律で許された範囲を大きく超えたところにまで及ぶ可能性すらある。

 4 属地主義要件の厳格解釈 ~拡張を制限する根拠の1つ目~

 (1) Patel事件決定

 次に、本項以下では、FCPAの贈賄禁止条項の域外適用拡張を制限する3つの根拠について紹介、検討をする。域外適用拡張を制限する3つの根拠の1つ目は、属地主義要件の厳格解釈である。この考え方が確認されたのが、United States v. Patel 事件(以下「Patel事件」という。)において2011年(平成23年)6月に出された決定である(注8)。同決定は、裁判所が、FCPAの域外適用拡張を初めて否定した例ともいわれている。

  Patel事件は、発行者等(上記2・①の類型)、国内関係者等(上記2・②の類型)のどちらにも該当しない被告人(英国国籍保有者)が、FCPAの贈賄禁止条項違反等で起訴された事件である。この起訴の訴因(count)3は、被告人が英国内から米国に対して贈賄取引に関する売買契約の入った小包を発送した行為を理由とする贈賄禁止条項違反であった。上記2のとおり、発行者等でも国内関係者等でもない被告人が贈賄禁止条項違反となるためには、「属地主義」の適用、すなわち、米国内での行為が必要であった。米国司法省側は、訴因3が贈賄禁止条項違反になる理由として、(訴因3自体は米国外の行為であるものの)被告人が別途米国内で行われた贈賄取引に関する会議に一度出席したことを主張した。しかし、裁判所は、この主張を採用せず、訴因3を却下した。

  この決定は、贈賄禁止条項のうち、米国内で行われた(while in the territory of the United States)という「属地主義」に関する要件を、「贈賄禁止条項の適用対象となる行為の際、行為者が物理的に米国内に存在していた」というように厳格に解釈することで、その域外適用に歯止めをかけるものと評価できるだろう。そして、この解釈は、条文の文言(while in the territory of the United States)に忠実な解釈であるように思われる。

 (2) FCPAガイドにおける属地主義要件 -Patel事件決定は受け継がれたか-

 2012年(平成24年)11月、米国司法省と米国証券取引委員会(SEC)は、A Resource Guide to the U.S. Foreign Corrupt Practices Act(以下「FCPAガイド」という。)(注9)を発表した。FCPAガイドは、FCPAの趣旨、要件等を網羅的に解説したものである。

  FCPAガイドは、贈賄禁止条項の域外適用について、(ア)米国に向けた、あるいは米国を通過する1本の電話、1通の電子メール等を送信する行為であっても、「州際通商」の要件を充たすこと、(イ)米銀行に向けた送金、その他の米国の銀行システムを利用した送金も「州際通商」の要件を充たすこと、(ウ)発行者等でも国内関係者等でもない者であっても、贈賄行為を米国の領域内において(while in the territory of the United States)行った者は、贈賄禁止条項の適用対象となること、(エ)発行者等でも国内関係者等でない者で、(ウ)に該当しない(米国領域内で何ら行為を行っていない)者であっても、agent、教唆、幇助、共謀に該当するのであれば処罰対象となり得ることなどを説明する一方(注10)、Patel事件決定には言及していない。

  FCPAガイドにおける上記説明のうち、(ア)(イ)の記載を理由に、「発行者等でも国内関係者等でもない日本企業が、米国外で、外国公務員等への贈賄行為等を行った場合、贈賄行為等に関するメールが1度でも米国のサーバーを経由していれば、あるいは、米金融機関を利用して贈賄の授受(送金)が行われていれば、贈賄禁止条項の適用がある。」、「FCPAガイドは、属地主義要件の厳格解釈をしたPatel事件決定を完全に無視した。」と解するのは早計である。(ア)(イ)は、あくまで、贈賄禁止条項の適用対象となる「州際通商」の要件(上記2のとおり、贈賄禁止条項の規制対象は、外国公務員等に対する利益供与等を促進するメールその他の「州際通商」の手段等を、腐敗の意図をもって用いる行為である。)について述べたものに過ぎない。FCPAガイドが(ウ)(エ)で述べるとおり、発行者等でも国内関係者等でもない者は、贈賄行為等を米国の領域内で行うか、agent、共犯理論等の適用がない限り処罰対象とはならないと解するべきであろう。

  そして、(ウ)の立場は、上記(1)のPatel事件決定の立場そのものであり、FCPAガイドは同決定(属地主義の厳格解釈)を踏まえたものと評価すべきである。

 5 人的管轄権~拡張を制限する根拠の2つ目~

 贈賄禁止条項の域外適用拡張を制限する3つの根拠のうち2つ目は、人的管轄権(personal jurisdiction)である。

  合衆国憲法等に基づくデュー・プロセスの要請により、米国裁判所は、その管轄する法域と最小限度の接触(minimum contacts)を持たない者などについては、人的管轄権を持たないため、実質審理をすることなく事件を却下する(注11)。人的管轄権は、FCPAの贈賄禁止条項の域外適用においても、当然問題となる。その代表例が、SEC v. Sharef事件(以下「Sharef事件」という。)における2013年(平成25年)2月の決定である(注12)

  Sharef事件は、シーメンス社のtransportation system operating groupのgroup presidentや、シーメンス社のアルゼンチン子会社のCEO等を務めた被告人(ドイツ国籍保有者)が、FCPAの贈賄禁止条項違反等で起訴された事件である。SECは、被告人がアルゼンチン子会社のCFOに対し、 アルゼンチンの公務員への贈賄を認めるよう圧力をかけたこと、その結果、同CFOが贈賄に関して虚偽の内容が記載されたアルゼンチン子会社の会計帳簿の証明に署名し、同証明に基づき親会社であるシーメンス社がSECに虚偽申告を行ったことなどを主張した。シーメンス社は、NYSE(ニューヨーク証券取引所)に上場しているため、被告人及びアルゼンチン子会社の行為は、発行者等(又はそのagent)による行為として、贈賄禁止条項の適用対象となるはずである。

  ところが、裁判所は、被告人は贈賄行為の実際の承認者ではないこと、SECへの虚偽申告について関与も認識もしていないこと、贈賄行為において米国の金融機関が利用されているが、被告人には贈賄行為について米国の金融機関を利用するよう指示をしたこともないことなどを指摘した上で、贈賄行為及びシーメンス社のSECへの申告に対する被告人の関与は弱く、被告人に対する人的管轄権を欠くとして、被告人に対する起訴を却下した。

  このSharef事件決定は、発行者等(又はそのagent)による贈賄行為等に該当し得ること、贈賄に関して米国の金融機関が利用されたことなどから、一見すると米国と関連性が肯定されそうに見える事案であったにもかかわらず、被告人の贈賄行為への関与度合いや、米国との関連性の認識等から、人的管轄権を欠く場合があることを明らかにしたものであり、贈賄禁止条項の域外適用に歯止めをかけるものと評価できるだろう。

  Sharef事件決定を踏まえれば、「発行者等又は国内関係者等に該当する者による贈賄行為は、すべて贈賄禁止条項の適用対象になる。」という理解は誤りである。また、Sharef事件決定は、発行者等(又はそのagent)の行為が問題になった事案であるが、発行者等でも国内関係者等でもない者による贈賄行為等についても、同様に、人的管轄権を欠く場合があり得るだろう。

  もっとも、Sharef事件決定が、被告人の贈賄行為における具体的な役割等に言及していることから明らかなとおり、人的管轄権の有無の判断は、具体的な事実関係に強く依存する。また、人的管轄権は、裁判所の管轄権の有無を判断する(文字通り「最小限度の」接触を求める)要件に過ぎないため、そのハードルはそれほど厳しく設定されているわけではないことにも留意すべきであろう(注13)

 6 小括

 今回は、FCPAの贈賄禁止条項の域外適用について、拡張を支える3つの根拠(属人主義と属地主義、agent、共犯理論(共謀罪、教唆、幇助)等の3つ)と、域外適用が積極的に行われやすい構造的な理由を紹介した。

  また、拡張を制限する3つの根拠のうち2つの根拠(属地主義要件の厳格解釈と人的管轄権)も併せて紹介した。今回紹介した2つの域外適用制限の根拠を踏まえると、贈賄禁止条項の適用対象は、次のとおり整理できるだろう。

  1.    発行者等又は国内関係者等、あるいは、そのagentであり、かつ、米国内で贈賄行為等に関与した者:適用対象となり得る。ただし、人的管轄権を欠く場合は、適用対象外となる。
  2.   発行者等又は国内関係者等、あるいは、そのagentであり、かつ、米国外でのみ贈賄行為等に関与した者:適用対象となり得る。ただし、人的管轄権を欠く場合は、適用対象外となる。
  3.   1. 2.以外の者で、米国内で贈賄行為等に関与した者:適用対象となり得る。ただし、人的管轄権を欠く場合は、適用対象外となる。
  4.   1. 2.以外の者で、米国外でのみ贈賄行為等に関与した者:1.~3.の者と共謀、教唆、幇助等が成立しない限り、適用対象とならない。ただし、人的管轄権を欠く場合は、適用対象外となる。

 もっとも、属地主義要件の厳格解釈によって制限される域外適用の範囲は限定的である。なぜなら、属地主義要件の厳格解釈は、発行者等、国内関係者等、それらのagent、共犯等のいずれにも該当しない者についてのみ、域外適用を制限する根拠だからである。また、上記5のとおり、人的管轄権も、それほど厳しいハードルではな

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