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大統領就任式実行委員のカジノ会社に罰金 元中国政府公務員に使途不明の支払い

奥山 俊宏

 ドナルド・トランプ米大統領の就任式典実行委員会で副委員長を務めるシェルドン・アデルソン氏が経営するカジノ経営会社「ラスベガス・サンズ」の幹部だった複数の人物が、中国政府幹部らとの政治的なコネを売りにするビジネス・コンサルタントに6千万ドル(数十億円)を支払い、その一部が使途不明になっている。大統領就任式を翌日に控えた19日、米司法省が発表した。米司法省は海外腐敗行為防止法(FCPA)違反の疑いで2011年から捜査。同日、同社が刑事罰として696万ドル(約8億円)を払い、今後の捜査に協力する一方、司法省は同社を不起訴とすることで両者の合意が成立した。

米カジノ大手ラスベガス・サンズ社は2007年、総合レジャー施設「ベネチアン・マカオ・リゾート」の営業をマカオで始めた。
 司法省のウェブサイトに掲載された同省とラスベガス・サンズ社の合意書によれば、このコンサルタントは中国政府の元公務員で、2006年秋、中国政府のマカオ連絡事務所の高官を通じて同社に紹介され、同社に雇われた。以後、2009年にかけて、同社は、ビジネスを促進し、ブランドを高めるため、中国やマカオの子会社を通じてこのコンサルタントに約6千万ドルを支払った。しかし、2008年初めまでに70万ドルが「消えてしまう」など、580万ドルは正当なビジネス目的とは言えない支払いだった。

 こうした支払いが始まって間もなく、同社の財務部門の社員が、透明性の欠如や手続き違反を問題視するようになった。2007年9月15日にこの社員が役員に送ったメールでは、146万ドルの支払いに疑問が提起された。「なぜこんなに多くの質問をするのかというと、私は、北京で別の経緯があると聞いているからです。それが本当かどうか分からないので、このメールにそれを書くのははばかられますが」

ラスベガス・サンズ社が経営する「パラッツォ リゾート ホテル カジノ」=2012年6月18日、米ネバダ州ラスベガスで
 この財務部門社員について、2008年2月23日、マカオの子会社の幹部が同社の幹部に苦情のメールを送り、「彼女をどうするべきか至急に決めなければ」と迫った。「最近もまだ彼女がトラブルのもとを作っています」。最終的に財務担当社員は辞めさせられる結果となった。

 ラスベガス・サンズ社の最高経営責任者で会長でもあるシェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson)氏のファミリーが所有するラスベガスの地元紙、ラスベガス・レビュージャーナルの記事によれば、司法省の捜査は2011年に始まったが、これまでのところ、賄賂性を裏付ける証拠は見つからなかった、という。

 米大統領選で当選を決めたトランプ氏は、2016年11月15日、大統領就任式典実行委員会(Presidential Inaugural Committee)のメンバーを発表した。アデルソン氏の名前が副委員長としてその中にあった。