愛知県がんセンター「治験プロトコールに違反した抗がん剤投与」(4)
2018年01月20日
鑑定採用決定から約1年が経過した1999年2月26日、原告側は意見書を提出し、「訴訟遅延のそもそもの原因は、不要かつ不能の鑑定を採用していることにある」と、訴訟の早期進行を求めた。
原告側はこの意見書で、①福島医師は抗がん剤によるがん治療と臨床試験の専門家であり、鑑定人として必要とされる特別な学識経験を十分に有している、②福島医師を証人として申請したのは原告側だが、福島医師は同時に、被告である愛知県が開設した愛知県がんセンターに勤務している医師であり、あえて証言に応じたのは医師としての良心と倫理に基づくものである。形式上は原告側証人だが、実質的には、特別の学識経験を有する第三者であって、鑑定証人としての証拠価値を有する、③福島医師に対しては、被告側にも十分に反対尋問の機会が与えられた。その後にO医師本人の尋問も行われ、福島医師に対する反論も含めて、専門家として意見を述べる機会を得ており、立証は尽くされている、④在京の10カ所を超える医療機関から鑑定を拒否されている理由の一つが、個別具体的ながん患者の余命について科学的に鑑定するという、不能なことを求められているからではないかと推測される、⑤口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果に基づいて裁判所が相当な損害額を認定すべきである――と主張した。
しかし、鑑定人さがしはこの後も続き、1999年4月16日に行われた、裁判所、原告、被告三者による訴訟の進行協議の後、三つの大学・医療機関に鑑定人推薦を依頼したが、いずれも拒否回答があった。同年6月1日、原告側は再度、意見書を提出し、鑑定決定の取り消しを求めたが、被告側から推薦
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