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記者接触直後、報道前にロス米商務長官がロシア取引の海運会社株を空売り

奥山 俊宏

 米政府のウィルバー・ロス商務長官が昨年10月末、海運会社「ナビゲーター・ホールディングス(ナビ社)」と自身やロシアの関係について米有力紙ニューヨーク・タイムズの記者から質問を受けた直後、それへの回答の前日にナビ社の株を「空売り」していた。ナビ社について否定的な報道が出ると知っていながら、その報道が始まるより前に、ナビ社の株を売却した格好だ。空売りの事実は雑誌フォーブスによって今年6月半ばに報じられ、「公務員の地位を利用したインサイダー取引だ」などの批判が出ている。

■ロス米商務長官への手紙

 ニューヨーク・タイムズや国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の記者たちの調べによれば、ロス氏は商務長官就任後もナビ社の株を持ち続けていた。一方、ナビ社は、ロシアのプーチン大統領の周辺と深い関係にあるガス石油化学会社「シバー」との取引で利益を得ていた。このような事実関係は、タックスヘイブン(租税回避地)から流出した「パラダイス文書」をICIJが分析する過程で浮かび上がった。ICIJは2017年春、「パラダイス文書」に基づく報道をその年の11月5日に始めると決めており、それを10日後に控えた2017年10月26日、「パラダイス文書」取材プロジェクトに参画するニューヨーク・タイムズの記者がICIJのためにロス氏にあてて質問状を出した。

 その手紙は次のような内容だった。

 「私はニューヨーク・タイムズの記者です。あなたの投資活動に関す

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