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環境基本法制定25年、SDGs時代にどう対応すればよいか

六車 明

「環境基本法」制定25年
 ―SDGs時代にどう対応すればよいか

弁護士 六 車  明

1 環境基本法はどのような法律か

六車 明(ろくしゃ・あきら)
 1952年東京生まれ。1975年慶應義塾大学法学部卒。同年司法試験合格。2年の司法修習(東京)の後、1978年裁判官。東京地裁、高松家裁、法務省刑事局付検事(労働刑法)、東京地裁、仙台地裁、東京高裁、公害等調整委員会審査官。1999年退職。同年慶應義塾大学環境法専任教員。法学部、法科大学院、LL.Mをへて2018年65歳で定年退職。同年4月慶應義塾大学名誉教授。同大学非常勤講師。2014年1月、弁護士登録。
 2018年(平成30年)11月19日、環境基本法は、公布・施行から25年をむかえる。

 制定から4半世紀がたち、環境をめぐる内外の社会経済情勢は大きくかわった。わたしたちは、この法律、あるいは、「環境」の問題にどう対応すればよいのだろうか。

 環境基本法とはどのような法律なのか。

 環境基本法は、公害対策、自然保護、地球環境保全の3つの分野を対象とする「基本法」である。制定時、すでに、公害対策は公害対策基本法(1967年(昭和42年)制定)、自然保護は自然環境保全法(1972年(昭和47年)制定)があった。それらを受け継ぎ、あらたに地球環境分野がくわわり、統一的な環境分野の基本法として環境基本法が制定された。

 環境基本法の名前にある「基本法」とはなにか。

 基本法が制定されるのは、社会のある分野におきている問題が大きくなり、しっかりとした考えをもって、法の観点から対応しなければならなくなったときである。
 最近では、2016年(平成28年)にサイバーセキュリティ基本法が改正され、同じ年に自殺対策基本法も改正されている。
 基本法は、つぎのようなことを定める。

  1.  なぜ、いま、その問題に法で対応するのか
  2.  だれがその問題を解決する責任と義務をおうのか
  3.  どのような考えのもとで問題に対応するのか
  4.  施策を具体化するときにもつべき個別の方針はなにか

2 公害対策基本法の制定と変容

 環境基本法の前身の公害対策基本法は、環境法分野における日本ではじめての基本法である。今から、51年まえの1967年(昭和42年)、戦後22年のときに制定された。なぜ、このときに公害対策基本法が制定されたのか。

 1945年(昭和20年)8月、アメリカは原爆を広島と長崎に投下し、戦争は終了した。占領、戦後復興、高度成長、そして深刻な公害と時代がかわり、1967年(昭和42年)にいたると、水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくを典型とする大規模かつ深刻な公害が進行し、日本は、なによりも公害「対策」を緊急にすすめなければならなかった。そのために公害対策基本法を制定したのである。

 公害対策基本法は、制定から3年後、環境と経済の関係の根本にかかわる重大かつ基本的な改正がされる。1970年(昭和45年)の秋から冬にかけての臨時国会は、公害国会ともいわれ、環境関連の合計14の法案が成立する。
 なかでも、もっとも根本的な立法は、公害対策基本法の目的を定める1条2項、「経済調和条項」の削除である。

 生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。

 この規定を削除した。現在につながる、環境と経済の根本的な関係が、基本法において規律された。

 生活環境を保全するということは、わたしたちが日常の日々を、ごくふつうに、おだやかにくらしていくための環境をまもる、ということである。
 削除前の公害対策基本法は、この、人間が生きていくためのもっともたいせつなことをまもることが、経済の健全な発展との調和が図られるというかぎりにおいてされればよい、と考えていた。
 環境と経済の根本的な関係をこのように、経済優先に考えていたのである。

 経済調和条項のある公害対策基本法をもつ日本の現実はどうであったか。

 1967年(昭和42年)に公害対策基本法が制定されたあとにおいても、各地で生活環境をおびやかす公害問題が続出した。カドミウム汚染、田子の浦のヘドロ、東京の新宿牛込柳町の鉛汚染、杉並区の光化学スモッグなどである。

 公害対策基本法は、生活環境の保全と経済の健全な発展との調和とうたったが、現実の社会では、経済の発展が優先され、生活環境がおかされつづけた。

 そこで、当初の公害対策基本法の「経済調和条項」を、公害国会において削除することにより、日本は、生活環境よりも経済を優先することはしない、という環境と経済の根本的な関係を明確にした。

 公害対策基本法改正の翌年の1971年(昭和46年)7月、環境庁が設置され、公害防止だけではなく、自然保護をふくめた環境行政を担当することになった。

 公害国会2年後の1972年(昭和47年)、自然環境保全法が制定される。法律の名前に「基本」の文字はないが、条文のなかに基本法の部分があり、自然環境分野においての基本法がはじまった。

 日本の環境法は、公害と自然保護の2つの分野で基本法をもつことになった。

 公害対策基本法から経済調和条項がのぞかれたものの、現実はどうであったか。日本は、どうしても、環境影響評価法をつくることができなかった。

3 公害対策基本法制定後の世界情勢の変化

 公害対策基本法制定から5年たった1972年(昭和47年)6月、スウェーデンのストックホルムで国連人間環境会議がひらかれ、「人間環境宣言」が採択された。そこで示された第1の原則は以下のとおりである。

 人は、尊厳と福祉を保つに足る環境で、自由、平等及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有するとともに、現在及び将来の世代のため環境を保護し改善する厳粛な責任を負う。これに関し、アパルトヘイト(人種隔離政策)、人種差別、差別的取扱い、植民地主義その他の圧制及び外国支配を促進し、又は恒久化する政策は非難され、排除されなければならない。

 人間環境宣言から20年をへた1992年(平成4年)6月、ブラジルのリオデジャネイロで国連地球環境サミット(リオサミット・地球サミット)が開かれ、環境と開発に関するリオ宣言が採択された。
 ここで採択された27の原則は、日本に対して、あらためて環境のことを考えなおすことを求め、あらたな立法をせまるものであった。そのなかでも、つぎの原則は重要である。

 第3原則
 開発の権利は、現在及び将来の世代の開発及び環境上の必要性を公平に充たすことができるよう行使されなければならない。
 第4原則
 持続可能な開発を達成するため、環境保護は、開発過程の不可分の部分とならなければならず、それから分離しては考えられないものである。
 第7原則
 各国は、地球の生態系の健全性及び完全性を、保全、保護及び修復するグローバル・パートナーシップの精神に則り、協力しなければならない。地球環境の悪化への異なった寄与という観点から、各国は共通のしかし差異のある責任を有する。先進各国は、彼等の社会が地球環境へかけている圧力及び彼等の支配している技術及び財源の観点から、持続可能な開発の国際的な追及において有している義務を認識する。
 第15原則
 環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない。
 第17原則
 環境影響評価は、国の手段として環境に重大な悪影響を及ぼすかもしれず、かつ権限のある国家機関の決定に服す活動に対して実施されなければならない。

 以上の原則は、将来世代との公平(第3)、持続可能な開発(第4)、先進国と開発途上国が有する共通であるが差異のある責任(第7)、予防原則(第15)、環境影響評価(第17)に関するものである。
 それは、公害対策基本法・自然環境保全法とはべつの、地球環境の分野に関するものであった。

 リオ宣言の1か月前の1992年(平成4年)5月、国連総会で、気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約・地球温暖化防止条約)が採択され、各国は、リオサミットでこれに署名をした。

 日本は、公害と自然環境の基本法はもっていたが、地球環境の基本法はもっていなかった。そして、なお、環境と経済とのあいだで緊張関係が続いていた。

4 環境基本法の登場

 リオ宣言の翌年の1993年(平成5年)、日本は、環境基本法を制定した。ちょうど25年前のことである。

 世界情勢から、日本は、できるだけはやく、地球環境分野の政策内容を、環境分野の基本法で示す必要があった。さらに、そこでは、公害対策、自然保護、地球環境全体について、日本は、経済と環境との関係をどのように考えているのか、ということを、あらためて示す必要があった。

 環境基本法は、環境保全という政策目標達成のための基本法である。
 基本法であるから、政策理念や各主体の責務、行政方針にかかわる規定が主な内容である。1条は、これを次のようにしめす。長文なので、適宜改行する。

 この法律は、
 環境の保全について、
 基本理念を定め、並びに
 国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、
 環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、
 環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって
 現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに
 人類の福祉に貢献すること
 を目的とする。

 法律の目的をしめす1条は、その全体のすがたをあらわす。
 環境基本法1条は、それを次のようにいっている。

  1.  国民にも、環境保全の責務がある。事業者だけでなく。
  2.  この法律は環境保全政策を推進するための法である。
  3.  将来の国民のことも考えている。
  4.  国民の健康のことを考えている。
  5.  国民の文化的な生活のことも考えている。
  6.  人類の福祉に貢献することを考えている。

 この法律をつらぬくキーワードは、「環境」ではなく、「環境への負荷」である。公害対策基本法のキーワードは、「公害」であった。

 環境基本法は、「環境への負荷」をつぎのように定義する(2条1項)。

 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

 「環境への負荷」ということばは、なぜキーワードなのか。

 このことばは、行政が、社会にいる各主体に対し、環境への負荷を減らすように誘導するため、あるいは、ある主体の負荷活動が行政の考える限界をこえるとき、その限界の範囲内に負荷活動をおさえるため、必要なのである。

 環境基本法の立法者は、1993年の立法当時、経済活動と環境についてどのような認識をもっていたのであろうか。それは、3条に規定されている。

 人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきている

 立法者は、この現状認識のもと、環境行政が政策目標とする、あるべき経済活動と、めざすべき社会をどのように考えていたか。それは、4条が示している。

 社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減する

 環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築される

 以上とは別に、立法者は、地球環境にかかわる経済活動についての認識を5条で示している。

 我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれている

 地球環境について、環境基本法は、あらたに「地球環境保全」というキーワードをつくった(2条2項)。

 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

 地球環境保全の推進は、5条が規定する。

 地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。

 環境基本法は、リオ宣言を主要部分のつぎ条文にとりこんだ。

 将来世代との公平(第3原則) 3条
 持続可能な開発(第4原則) 4条前段
 先進国と開発途上国が有する共通であるが差異のある責任(第7原則) 32条から35条
 予防原則(第15原則) 予防原則と密接な未然防止原則が4条後段
 環境影響評価(第17原則) 20条

 最後の環境影響評価に関する環境基本法20条は、4年後の1997(平成9年)、環境影響評価法(環境アセスメント法)となって具体化する。この法律は、公害対策基本法のもとではついに制定することができなかった。

 公害、自然保護の分野では、公害対策基本法と自然環境保全法の規定を引き継ぐことがおおかった環境基本法のなかで、環境影響評価法の制定を義務付ける20条が経済に与えたインパクトはおおきい。

 環境影響評価法は、罰則規定をともなわない、環境法としては珍しい部類にはいる法律である。横断条項(33条)が行政担当者に与える権限が、罰則にかわり法の実効性を担保することになっている。
 行政担当者は、開発の免許に関する審査と、開発の環境影響評価を踏まえた環境保全に関する審査の双方をし、開発の免許に関する審査をパスしても、環境面で問題があれば、免許を拒否する処分を行うと規定されているのである。

 ミレニアムの2000年(平成12年)には循環型社会形成推進基本法(循環基本法)、2008年(平成20年)には生物多様性基本法という、環境基本法の理念にもとづく、特定分野の中間的な基本法も制定された。地球温暖化対策基本法案は、国会に提出されたが、2012年衆議院の解散により廃案となった。

 環境法分野の個別法としては、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、土壌汚染対策法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法・廃掃法)、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)、環境影響評価法、地球温暖化対策の推進に関する法律などがある。
 個別法のなかには、環境基本法の前に制定されているものもある。いずれかの中間的な基本法の傘の下にはいっているものも、はいっていなものもある。

5 実務法律家にとって、なぜ環境基本法は大切なのか

 環境分野の法律のうち、実務的分野の法律は、企業、個人ともにかかわりが深い。
 廃棄物処理法は、ほとんどすべての企業や家庭がかかわる。土壌汚染対策法は、不動産売買やM&Aの法律実務を担当する者に必須である。容器包装リサイクル法も、ペットボトルなど容器や商品の包装にかかわるスーパーなど多くの企業がかかわる。環境影響評価法は、おおきな開発プロジェクトの担当者が直接かかわる。
 こうした実務で多用される環境法の大半は環境省所管であり、環境基本法は、環境政策の根幹をさだめているから、個別の環境法と環境基本法の関係は、通常の法律と憲法の関係に近い。個別環境法の実務をするにあたっては、そのもとにある環境基本法をふまえる必要がある。
 環境基本法を知らないで個別の環境法にかかわるということは、憲法を知らないで法律をあつかうのと同じことである。

6 環境基本法から25年

 25年前の1993年(平成5年)と今とでは、地球環境をめぐる世界の情勢がおおきくかわった。

 とりわけ、地球温暖化をめぐる情勢はどのようにかわったか。

 環境基本法が制定される前年の1992年(平成4年)5月に採決された気候変動に関する国際連合枠組条約のもと、1997年(平成9年)12月には、京都議定書が採択される。ポイントは、開発を終えた国に対してのみ、温室効果ガスの具体的な削減数値(パーセント)を明示して実行を強制するところにあった。
 2015年(平成27年)12月、気候変動枠組条約締約国会議において、パリ協定が採択される。この協定は、参加国、温室効果ガス削減のしくみとも、京都議定書とはことなる。開発途上国から開発を終えた国までふくみ、それぞれの国・地域がみずから削減目標を設定・公表し、その達成をめざすのである。地球温暖化は深刻の度をますます深めているのである。

 同じ年の2015年9月、国連は、「わたしたちの世界をかえる:持続可能な開発のための2030アジェンダ Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development, SDGs」を決議した。
 環境、経済、社会のすべての面からの17のゴールが、あざやかなカラーのアイコンで示された。1番目のゴールは、貧困をなくす、2番目が飢餓をゼロにするである。世界は、社会のあらゆる分野において、1人をのこすことなく、環境、経済、社会の面で、持続可能な社会をつくるために合意をしたのである。
 地球温暖化以外の面においても、世界は、持続可能な社会にむけて新しい歩みをはじめた。

 環境基本法制定後の裁判所の環境の本質的な価値に対する考えかたに変化はあるか。

 最高裁は、2006年(平成18年)3月30日、東京都国立市の高層マンションをめぐる訴訟の判決において、一定の者がもっている「良好な景観の恵沢を享受する利益」は法律上保護にあたいすると述べている(最高裁判所HP裁判例情報http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=32819)。この判決は、民法709条の「法律上保護される利益」に関するものである。
 この事件は、1審がマンション上層部の撤去を命じるというものであったこともあり、注目されていた。裁判所が環境の価値をどのように評価しているか、これからどのような方向にすすむのか、ということを考えるときのベースになる。

 これとは反対に、環境基本法の規定であっても、公害対策基本法の規定をそのままひきついだため、その制定から51年がたって、社会の実情にあわなくなっているものもある。それは、公害の定義である。
 環境基本法は、公害の定義を、大気、水、土壌、騒音、振動、地盤沈下、悪臭の7つ、しかも「相当広範囲にわたる」ものに限定している(2条3項)。これと連動し、公害紛争処理法(1970年(昭和45年)制定)の公害の定義(2条)もせまい。そのため、最近ふえている近隣騒音のトラブルが、法律の定義する公害にあてはまらない。

7 環境基本法をこえる

 環境基本法は、環境行政のための法律である。環境基本法も行政法の1つであるから、当たり前のことであるといわれればそうである。
 わたしたちは、環境基本法に規制される立場である。環境に関する権利や利益は、環境基本法の前面にでてこない。

 行政のための法であると、ひとびとの権利や利益は、前面にでないのであろうか。たとえば、同じ行政であっても、環境行政と消費者行政とではすこしそのありかたがちがうようにおもう。
 鉱山や化学工場から川や海にだされる排出水がひきおこしたイタイイタイ病や水俣病は、公害・環境問題であるとともに、食品安全・消費者問題である。化学物質過敏症も、環境の問題であり、消費者の問題である。

 消費者の分野の基本法である消費者基本法は、公害対策基本法制定の翌年の1968年(昭和43年)消費者保護基本法として制定された。公害を生む経済社会は、同時に消費者の被害を生む。

 消費者保護基本法は、2004年(平成16年)の改正により消費者基本法となるとき、重要な文言がくわわった。
 それは、「消費者の権利の尊重」(1条、3条、4条、5条1項柱書)、「消費者の権利」(2条1項)である。

 消費者に関する基本法は、また、2004年(平成16年)の改正で、「消費者政策の推進は、環境の保全に配慮して行われなければならない。」(2条5項)という規定をくわえ、消費者行政は環境行政の関係の深さをしめした。

 消費者基本法は、制定50年をむかえ、おおきく変容をしている。

 なぜ、今日の消費者基本法に消費者の権利尊重規定があり、環境基本法には環境に関する権利や利益についての規定がないのか。

 環境基本法が環境政策に関する法律であるかぎり、消費者基本法のような変容は無理なのだろうか。

 おそらく、環境の根本的な価値をどのように守るべきか、ということは、行政にまかすことではなく、わたしたちがみずから考えるべきことなのであろう。

 SDGs時代のわたしたちは、環境基本法にとらわれることなく、企業と市民が、ともに、自主的に、あるべき環境法をもとめ、あたらしい形の法を、それは、ハードローにこだわることなく、ソフトローをふくめて、つくっていくべきなのであろう。