2020年01月31日
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東京高検検事長は検事総長に次ぐ検察ナンバー2のポスト。名古屋高検検事長は、大阪高検検事長に次ぐナンバー4。序列からすれば、官邸が求める黒川氏の検事総長昇格が順当に見えるが、稲田氏(33期)や辻裕教・法務事務次官(38期)ら法務・検察首脳はかなり早い時期から稲田氏の次の検事総長に林氏を起用する方針を固めていた。
今秋には「林氏で次期検事総長は決まり」との情報が検察内外に広まり、最高検の事務局幹部が林氏に検察事務官の幹部人事の相談をしたり、気の早い検察担当記者が「お祝い」で名古屋に出向いたりした、との話も流れた。
稲田氏は、2020年4月に京都で開く国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)で主催国の検事総長として挨拶するのを花道に、林氏が63歳になる20年7月の前に退官し、林氏に検事総長の椅子を譲る心づもりだったとみられる。
コングレスは5年ごとに開かれ、日本での開催は1970年以来で50年ぶり。世界約150カ国から法相や検事総長級が集う。
状況が一変したのは、2019年11月中旬。辻次官が2020年1月上旬発令に向けて、黒川検事長退官の人事案に対する官邸の感触を探ったところ、官邸側は、法務省側の意に反して黒川氏の検事総長昇格を求めていることが分かった。黒川氏を検事総長にするには、稲田氏が退官するしかない。その後、辻次官は何度か官邸の意向を探り、官邸側の「黒川総長」希望が固いことを確認。辻氏は、稲田氏に官邸側の意向を伝えたとみられ、稲田氏は官邸の事実上の退官勧奨を受け入れて退官するか、拒否して続投するか、の二者択一を迫られることになった。
結局、法務省は、19年12月17日の閣議までにどうするかの結論を得ることはできず、黒川、林両氏の人事を凍結。同日の閣議が承認した1月9日付の法務・検察の人事異動は、上野友慈・大阪高検検事長(司法修習35期)が辞職しその後任に榊原一夫・福岡高検検事長(36期)を、その後任に井上宏・札幌高検検事長(37期)を充てる小規模のものとなった。
この異動では、法務省事務方ナンバー2の小山太士・法務省刑事局長(40期)が最高検監察指導部長に回り、その後任に川原隆司官房長(41期)、その後任に伊藤栄二・山形地検検事正(43期)が就く、法務省センターラインの人事も併せ行われたが、辻次官の人事も凍結となった。
こうした人事が12月17日に内示されると、検察部内に衝撃が走った。検察部内では、「次期総長は林検事長で確定」説が流布していただけに、検察や法務省幹部の間では「どうなっているのか」と疑心暗鬼が広がっていた。
対外業務は、法務省の予算や法案で政官界へのロビーイングが中心になる。政界から検察への防波堤の役回りも担う。どうしても汚れ仕事になる。その間に検察不祥事やそれをきっかけとした検察改革もあった。いつの間にか、黒川氏が汚れ役、林氏がプリンスになり、林氏が検事総長候補、黒川氏はそのスペアの位置づけになった。
法務省は林氏を法務事務次官→東京高検検事長という「トップ・コース」に乗せる予定だったが、官邸の介入で異変が起きる。法務事務次官だった稲田氏が16年夏、官房長の黒川氏を地方の検事長に出し、刑事局長の林氏を自らの後任にする人事案を官邸に打診したところ、黒川氏を事務次官とするよう求められ、受け入れた。
法務省側は1年で林氏と交代させるとの約束をとりつけたと受け止めていたが、翌年、官邸は黒川氏を留任させ、18年1月には、当時の上川陽子法相が林氏を名古屋高検検事長に転出させた。結局、黒川氏は19年1月、東京高検検事長に異動するまで2年半、法務省事務方トップを務めた。
官邸が、黒川次官を望んだのは、黒川氏が官房審議官、官房長時代に培った野党などへのロビーイング力を必要としたからだった。官邸が、今回、黒川氏を検事総長に起用したい理由は、「官房長、法務事務次官として内閣を支えた黒川氏に対する論功行賞」(官邸に近い政界関係者)との見方もあるが、「政治主導を掲げる官邸が、政治による官僚支配に聖域はないと見せつけるため、あえて検事総長人事に注文を付けたのではないか」と指摘する法曹関係者もいる。
1956年8月14日生まれの稲田氏の65歳の定年である2021年8月13日まで、まだ1年8カ月もある。心身ともに健康と伝えられ、懲戒処分を受けるような話もない。客観的には辞めさせられる理由は何もない。
一方、検察庁法14条は「法務大臣は、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる」と定める。
「個々の事件の取調べや起訴、不起訴の処
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