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関西電力元副社長が告白、トラブル解決で森山助役に依頼した県への圧力

村山 治

 関西電力の役員ら20人が、高浜原発が立地する福井県高浜町の森山栄治元助役(19年死去)から計約3億2千万円分の金品を受領していた問題。関電側は、生命線である原発事業に影響力を持つ森山の機嫌を損ねるのを恐れ、仕方なく受け取った、などと「被害者」の立場を強調するが、果たして、そうか。筆者は朝日新聞記者時代の2014年、関電の政官財の裏工作をかつて取り仕切った元副社長の内藤千百里(18年死去)から地下経済も交差する関電の裏面史を聞いた。森山と関電の関係もその中に登場した。この連載では改めて、内藤証言を軸に「関電の闇」の深層に迫る。連載第8回の本稿では、高浜原発から出る温排水をめぐるトラブルを収めるため、森山氏に県への働きかけを依頼し、地元の港運会社に「土地買収」の名目で資金を提供した、との内藤証言を紹介する。(敬称略)

●「森山を使って福井県の地価評価に圧力」

内藤千百里・元関西電力副社長=2014年6月2日、大阪市北区、竹花徹朗撮影
 内藤は、2014年7月30日、大阪のレストラン「奈良十三屋」でのインタビューで、立地担当副社長時代、高浜原発の温排水で被害を受けたとクレームをつけた港運会社から二束三文の土地を買い取る際、福井県に対し、土地を実際より高く評価するよう森山を使って工作した、と証言した。港運会社について、インタビューに内藤はその名前を出したものの、本稿では、同社の側に違法性があるとは言えないこと、取材に応じた同社会長から強い希望があったこともあり、「○○○○○」と匿名にすることにした。

 内藤: 神戸の港の○○○○○。

 記者: ○○○○○ですか?

 内藤: これが高浜の海岸で。

 記者: あー言っていましたね。フジツボじゃなくて。

 内藤: フナクイムシ。外用材を(積んだ船を)係留しとってね。フナクイムシが発生して、ごっつい損害を受けた。発電所の温排水の影響だということで、応対して、支配人まで(話が)上がって――支配人は偉いんでっせ。部長の上ですから――。支配人が
 「これはしょうがないですわ。これだけフナムシが湧いてる。実際確認してますねん。だから了解してくれ」
 「あかん」
 「なんであかんの?」
 カネを惜しむんじゃないんです。温排水の補償は、発電所をつくるときに全部終わっとるわけ。それから2年もたってね、もしもまた温排水の補償をしたら、あとはエンドレスに続くわけ。だから、「こんなことやったら、きりない。絶対にカネは払うな」言うてね。

 金を出すのはいいが、ただ、温排水被害という名目ではだめ、という内藤の指示に、支配人は困った。交渉はもめにもめ、結局、内藤が港運会社社長と談判することになった。

 内藤: 向こうの社長が最後、私とこ来て
 「我々としてもそれだけの損害を受けたんやから、とにかく賠償してくれ」
 「そんなね、社長、無理した話じゃなしに、いくらカネがほしいんや? それだったら話も。温排水の補償にかこつけて、なんじゃかんじゃやったら一切、拒否する。裁判しよ」
 傲慢な社長でっせ。それがね
 「へえーーー。わかりました。実は2億ほしいんです」
 「それだったら2億出しましょう。温排水は一切関係ないんですよ」
 「わかってます」

 後で記すが、内藤のいう「2億」は、内藤の記憶違いで、本当は10億円余だったようだ。こうして関電は、港運会社に金を支払うことにしたが、温排水での補償金以外の名目が必要だった。

 内藤: 「2億出す代わりに、なんかこちらに出すものないんかいな? なんか土地持ってるんやからほかに土地持っとるでしょ」
 たまたま、高浜の発電所の裏山はその会社が全部持っとる。
 「それだったら、この裏山全部買いましょ」
 でも山ですからね、2億もしない。県のあれに頼んで評価してもらって2億円払います。しかし、なんぼ筆をなめてもね、あれだけの山林で2億円はしない。

 内藤は2014年2月10日の同ホテルジムでのインタビューでは、土地売買に県の評価が必要な理由を次のように話した。このときは、森山の名前は出していなかった。

 内藤: 「我々は公益事業ですから、言い値で買ったらえらいことになる。安く買ってもいかん。(だから)県の査定にかけます。県の査定で買うことで収めます」と(港運会社社長に)言った。

 そして、内藤は、この二束三文の土地を「県の査定」で高く評価してもらう工作を森山に依頼した、という。2014年7月30日のインタビューで、内藤は次のように語った。

 内藤: 「そこは私に任してくれ」

高浜町元助役の森山栄治氏(「高浜町 町勢のあゆみ」から)
 で私は同和のおっさんに、いまでも私に何やかや贈ってくる森山いう有名な……、
 「森山さん、かくかくしかじかやから、この男を助けたって。それには、我々は公益事業やから、いい加減なことはできない。カネは出す。2億。わかる? この山林買い取るのに県の用地に話して評価を2億にしてくれ」
 「まー、無理やな、それは」
 それでも最後はやってくれたんですよ。

 記者: 力があるんですね。

 内藤: きれいに何ら瑕疵がない。県の評価額どおり、われわれは対応したわけですからね。
 それでその社長は喜んでね。最後、神戸で盛大に打ち上げ。

 内藤: いま高浜がね、そないして2億で買うた山林が非常に、裏山が役に立っている。向こう側まで発電所用地になって、それで喜んどるんでっせ。

 記者: それはあるんですね。いろんなものをプールする…

 内藤: そこに全部置ける。ほんとに。

 この話があった当時、森山は高浜町助役だったと思われる。すでに紹介したように、森山は福井県の知事も一目置く実力者だった。森山が実際に、県に働きかけた事実があるのか、働きかけたとしたら、それはどういうものだったのか、定かではないが、内藤証言によれば、「無理」は通った。2014年2月10日のインタビューでは、内藤は港運会社社長から贈り物を受け取ったことも明らかにした。

 内藤: 彫金(ちょうきん)の壺、今で1000万円近くするものをもらった。

 このとき、内藤は「どこにも法律違反はしていないよ」と述べたが、6月30日、リーガロイヤルホテル大阪ジムでのインタビューでは、、「二足三文でね。当然、何億というカネにならない。それではしょうがないから、県に言うて。県の評価をとらないかんわけですから、公益事業ですから。で、それで評価してもらって。ここらは脱法ですけどね」と言っている。

●「あれで生き延びることができた」
  ―港運会社現会長は語る

関西電力高浜原発=2020年2月11日、福井県高浜町、朝日新聞社ヘリから、小杉豊和撮影
 内藤証言をもとに高浜原発近くの関電所有地の登記情報を調べたところ、関電は、内藤証言に登場する港運会社が所有する計約8万9千平方メートルの土地について1987年2月20日、所有権移転請求権仮登記をし、同年4月1日、所有権移転登記をしていたことがわかった。

 内藤証言に登場する港運会社社長の息子の同社現会長(76)が2020年2月15日、取材に応じた。

 会長は

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