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臨床試験実施計画書(治験プロトコール)違反を主張して遺族が提訴

東京女子医大病院「補助人工心臓治験訴訟」③

出河 雅彦

 より有効な病気の治療法を開発するために人の体を使って行う臨床研究は被験者の保護とデータの信頼性確保が欠かせないが、日本では近年明らかになったディオバン事件にみられるように、臨床研究をめぐる不祥事が絶えない。この連載の第2部では、患者の人権軽視が問題になった具体的な事例を検証する。その第4シリーズとして取り上げるのは、2007年に補助人工心臓の臨床試験の被験者となり、その後死亡した患者の遺族が臨床試験の実施計画書(プロトコール)違反を理由に東京女子医科大学に損害賠償を求めた訴訟である。その第3回の本稿では、遺族が東京女子医大を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、治験審査委員会の議事録や有害事象報告など治験関係文書の開示要求に抵抗していた東京女子医大が最終的に裁判所に提出するまでの経緯を見ていく。

 

拡大東京女子医科大学病院
 東京女子医大病院で補助人工心臓エバハート(※筆者注=本文では製品名として基本的に「エバハート」を用いるが、文献や資料などを引用する場合には「エヴァハート」「EVAHEART」を用いることもある)の治験の被験者となって植え込み手術(※筆者注=本文では基本的に「植え込み」という言葉を用いるが、文献・資料を引用する際には「植込み」「埋め込み」などの語を用いる場合もある)を受け、2008年10月に死亡した患者(以下、T子さんと言う)の遺族(T子さんの母親と二人の姉)は2011年6月30日、東京女子医科大学を相手取り、約3100万円の損害賠償の支払いを求める訴えを東京地方裁判所に起こした。治験の実施計画書であるプロトコール(※筆者注=本文では製品名として基本的に「プロトコール」を用いるが、文献や資料などを引用する場合には「プロトコル」を用いることもある)の規定に照らしてT子さんを被験者とすることが適正であったのか否かを、外部委員を含めた調査委員会で調べてほしいという求めを東京女子医大側から拒絶され続けたことが、遺族を提訴に踏み切らせた。

拡大T子さんの治験実施計画書の「除外基準」に該当していたという原告側の主張を記載した訴状
 原告側は訴状で、薬事法に基づく厚生労働省令(医療機器GCP省令)で治験実施機関は治験依頼者(開発企業など)が作成したプロトコールの内容を遵守しなければならないことが定められていると指摘し
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筆者

出河 雅彦

出河 雅彦(いでがわ・まさひこ) 

 1960年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。産経新聞社を経て、1992年、朝日新聞社入社。社会部、科学医療部などで医療、介護問題を担当。2002~2013年、編集委員。2013~2016年、青森総局長。医療事故や薬害エイズ事件のほか、有料老人ホームや臨床試験について取材。2021年4月からフリーランス。
 著書に『ルポ 医療事故』(朝日新聞出版、「科学ジャーナリスト賞2009」受賞)、『混合診療』(医薬経済社)、『ルポ 医療犯罪』(朝日新聞出版)、ルポライター鎌田慧氏の聞き書き『声なき人々の戦後史』(藤原書店、第16回「パピルス賞」受賞)。橳島次郎氏との共著に『移植医療』(岩波書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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