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人工心臓開発会社役員の親族が治験に関与、被験者に説明せず

東京女子医大病院「補助人工心臓治験訴訟」⑤

出河 雅彦

 より有効な病気の治療法を開発するために人の体を使って行う臨床研究は被験者の保護とデータの信頼性確保が欠かせないが、日本では近年明らかになったディオバン事件にみられるように、臨床研究をめぐる不祥事が絶えない。この連載の第2部では、患者の人権軽視が問題になった具体的な事例を検証する。その第4シリーズとして取り上げるのは、2007年に補助人工心臓の臨床試験の被験者となり、その後死亡した患者の遺族が臨床試験の実施計画書(プロトコール)違反を理由に東京女子医科大学に損害賠償を求めた訴訟である。その第5回となる本稿では、患者の遺族、病院の医師、補助人工心臓の開発者に対する尋問の内容を紹介する。

東京女子医科大学病院
 東京女子医大病院で植え込み型補助人工心臓エバハート(※筆者注=本文では製品名として基本的に「エバハート」を用いるが、文献や資料などを引用する場合には「エヴァハート」や「EVAHEART」を用いることもある)の治験の被験者となった患者(以下、T子さんと言う)の遺族の一人として東京女子医大に損害賠償を求める訴訟を起こしたT子さんの姉(以下、U子さんと言う)、エバハートの開発者である山崎健二医師、T子さんの主治医(以下、S医師と言う)の3人に対する尋問は2013年10月24日に東京地裁で行われた。

 尋問に先立ち、U子さんは東京地裁に陳述書(2013年9月4日付)を提出した。その中で、T子さんが治験に参加す

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