メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

福島第一原発3号機爆発「低く速いダーンッ!」無衝撃の轟音

福島第一原発の事故現場回想(3)

奥山 俊宏

 大手電機設備会社の社員として長年にわたって東京電力の原発で働いてきた彼は、2011年3月11日から15日にかけて事態が悪化しつつある福島第一原発の現場で3回にわたる爆発をまぢかで経験した。2012年2月、彼は、福島県いわき市内で、編集者の久田将義氏と朝日新聞記者の奥山俊宏のインタビューを受け、1年弱前の記憶をたどった。記事にしない前提のインタビューだったが、このほど、事故発生10年を前にその前提を解除。氏名や勤務先の会社名を伏せた上でインタビューの内容を公にすることに彼は同意した。それを4回に分けて「法と経済のジャーナル AJ」で連載する。第3回の本稿では2011年3月14日、2号機タービン建屋の出入り口の近くにいて3号機の爆発に遭遇した際の記憶をたどる。

■14日、3号機爆発に隣の建屋で遭遇

拡大福島第一原発3号機=2011年3月15日に東電社員が撮影し、同社が2013年2月1日に公表した写真
 1号機に続いて、2011年3月12日夜から13日朝にかけて、今度は3号機の原子炉が冷却不能に陥った。津波来襲後も3号機は全電源喪失を免れて直流電源や緊急炉心冷却装置(ECCS)が12日昼までは機能したが、12日夜にバッテリー切れになったらしく、炉内の監視や制御が難しくなった。13日未明には注水が止まり、圧力が高まり、水位も下がっていった。13日朝には炉内の燃料が空気中に露出し、溶融を始めた、とみられた。1号機と同様に3号機も水素爆発を起こすのではないかと心配された。

 以下の彼の話で「13日」と述べられているのは誤りで、正しくは14日のことであると思われる。

 奥山:13日はそのあとどうされたんですか?

 マサ:13日は9時か10時に「戻っていいです」と言われて、みんなのところに戻って、すぐ「じゃ、次の仕事」っていう話で東電さんから話がきて。今度は2号機のタービン建屋の壁に穴をあけて、電源車からケーブルを通して、で、その通したケーブルを、パワーセンターっていう電源なんですけど、そこにつないでくれっていう仕事がきて。その仕事ともうひとつ、その奥のほうにいったところの、MCCっていうもうひとつちっちゃい電源の健全性を確認してくれっていう、ふたつの仕事がきて。それをチームを組んで、10人ぐらいいたかなぁ、そのくらいの人数で車3台に乗って。で、その2号のその時点では大物搬入口があいちゃってるんで、普通のアクセスじゃなくて大物搬入口から中に入っていって。

 奥山:タービン建屋の中に。

 マサ:はい、中に入っていって。

 発電所内には大小さまざまな機器があり、それらを機能させる電気も高低3種類あった。6900ボルトの高電圧、480ボルトの低電圧、そして、一般家庭の電気コンセントと同じ100ボルト(注21)。1、2号機には、6900ボルトの高圧電源盤(M/C、Metal-Clad Switch Gear)が12台あったが、2号機の7台はすべて水没し、1号機の5台も水をかぶり、いずれも使用不能になった。480ボルトの低圧電源盤などをコンパクトに収納したパワーセンター(P/C)も12台あり、このうち8台は津波で使用不能になったが、2号機タービン建屋1階にあった4台(P/C 2A、P/C 2B、P/C 2C、P/C 2D)はベース部に水をかぶっただけで、「給電元のM/Cが使用不可のため受電不可」ではあるものの何とか使えそうな状況だった(注22)。MCC(Motor Control Center)は小容量の100ボルトの所内低電圧回路に使用する電源盤を指す。

 福島第一原発の対策本部は、使用可能な2号機の低圧電源盤(P/C)と外部から来援した電源車を用いて、原子炉への高圧注水が可能なほう酸水注入系などの電源を復旧しようと考えた。電源車からケーブルを敷いて、2号機の低圧電源盤につなぎ込む作業を進め、12日午後3時半ごろ、準備が完了した(注23)。ところが、1号機の原子炉建屋が爆発し、敷設したケーブルが損傷し、低圧電源盤(P/C 2C)の受電が停止してしまった(注24)。彼は14日、その復旧に

・・・ログインして読む
(残り:約7321文字/本文:約9096文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。 近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡は okuyama-t@protonmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

奥山 俊宏の記事

もっと見る