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安倍前首相秘書に公民権停止3年、略式命令の書面開示

奥山 俊宏

 安倍晋三前首相の政治団体「安倍晋三後援会」の政治資金収支報告書に「桜を見る会」前夜祭の収入や支出が記載されなかった事件の刑事確定訴訟記録のうち裁判書について、東京地検は12日、記者の請求に応じて閲覧を許可した。閲覧したところ、政治資金規正法違反の罪で起訴された秘書の配川博之氏(61)に対して、東京簡裁は罰金100万円の刑のほかに、公民権停止3年を言い渡していた。

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 配川氏は昨年12月24日、東京区検の検察官によって政治資金収支報告書不記載の罪で東京簡裁に起訴された。記者はこの訴訟記録の閲覧を東京地検に請求。今年1月8日付で受理された。

 3月12日午前、東京地検の記録担当から記者に連絡があり、裁判書(簡裁が出した略式命令の書面とそれに引用された区検の起訴状)について、裁判官や検察官の氏名、共犯者の氏名などを閲覧不許可にすると知らされた。同日午後、残りの部分について記者は地検で閲覧した。

 それによれば、簡裁が12月24日に出した略式命令の主文には、「被告人を罰金100万円に処する」との記載に加え、「被告人に対し、選挙権及び被選挙権を有しない期間を短縮し、これを3年とする」との記載もあった。

 政治資金規正法28条は、収支報告書不記載などの罪を犯し罰金の刑に処せられた者について、その裁判が確定した日から5年間、公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権を有しない、と定めている。この原則5年を短縮して、3年とする、というものだ。

 証拠など訴訟記録のその他の部分についても記者は東京地検に閲覧を請求しているが、「現在、検察審査会に提出している」との事情から、後日、「検察庁の事務に支障がなくなった段階で閲覧の当否を検討する」ということになった。

 刑事訴訟法53条は「何人(なんぴと)も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない」と定め、刑事確定訴訟記録法4条は「保管検察官は、請求があつたときは、保管記録を閲覧させなければならない」と定めている。


筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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