メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

東大医科研、臨床試験に薬候補を提供、でも「共同研究ではないから」

東京大学医科学研究所「知らされなかった有害事象」②

出河 雅彦

 より有効な病気の治療法を開発するために人の体を使って行う臨床研究は被験者の保護とデータの信頼性確保が欠かせないが、日本では近年明らかになったディオバン事件にみられるように、臨床研究をめぐる不祥事が絶えない。この連載の第1部では、生命倫理研究者の橳島次郎氏と朝日新聞の出河雅彦記者の対談を通して、「医療と研究をきちんと区別する」という、現代の医学倫理の根本が日本に根づいていないことを、不祥事続発の背景事情として指摘した。第2部では具体的な事例を検証する。その第6弾として取り上げるのは、東京大学医科学研究所が開発した医薬品の候補物質を使って医科研附属病院が行った臨床試験で発生した有害事象に関する情報を、医科研が同種の候補物質を臨床試験用に提供していた他の医療機関に伝えていなかった問題である。筆者はこの問題を同僚記者とともに取材し、いまから約10年前に朝日新聞に掲載した記事で伝えた。第2回の本稿では、関係者に対する取材と記事掲載までの経緯をたどる。

▽連載第1部: 生命倫理研究者・橳島次郎氏との対談

▽連載第2部第1シリーズ: 愛知県がんセンター「治験プロトコールに違反した抗がん剤投与」

▽連載第2部第2シリーズ: 金沢大学病院「同意なき臨床試験」

▽連載第2部第3シリーズ: 金沢大学病院「倫理指針逸脱の先進医療」

▽連載第2部第4シリーズ: 東京女子医大病院「補助人工心臓治験訴訟」

▽連載第2部第5シリーズ: 群馬大学病院「肝臓手術8人死亡」

▽連載第2部第6シリーズ: 東京大学医科学研究所「知らされなかった有害事象」①

 

東京大学医科学研究所=東京都港区白金台
 前回述べたように、筆者と同僚
・・・ログインして読む
(残り:約9748文字/本文:約10444文字)