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臨床試験「有害事象」記事に対する医学界の反応、事実無根の「捏造」非難まで

東京大学医科学研究所「知らされなかった有害事象」③

出河 雅彦

 より有効な病気の治療法を開発するために人の体を使って行う臨床研究は被験者の保護とデータの信頼性確保が欠かせないが、日本では近年明らかになったディオバン事件にみられるように、臨床研究をめぐる不祥事が絶えない。この連載の第1部では、生命倫理研究者の橳島次郎氏と朝日新聞の出河雅彦記者の対談を通して、「医療と研究をきちんと区別する」という、現代の医学倫理の根本が日本に根づいていないことを、不祥事続発の背景事情として指摘した。第2部では具体的な事例を検証する。その第6弾として取り上げるのは、東京大学医科学研究所が開発した医薬品の候補物質を使って医科研附属病院が行った臨床試験で発生した有害事象に関する情報を、医科研が同種の候補物質を臨床試験用に提供していた他の医療機関に伝えていなかった問題である。筆者はこの問題を同僚記者とともに取材し、いまから約10年前に朝日新聞に掲載した記事で伝えた。第3回の本稿では、記事に対して医学研究者から寄せられた批判と、それらを踏まえて朝日新聞が臨床試験管理の専門家にインタビューした記事の内容を紹介する。

▽連載第1部: 生命倫理研究者・橳島次郎氏との対談

▽連載第2部第1シリーズ: 愛知県がんセンター「治験プロトコールに違反した抗がん剤投与」

▽連載第2部第2シリーズ: 金沢大学病院「同意なき臨床試験」

▽連載第2部第3シリーズ: 金沢大学病院「倫理指針逸脱の先進医療」

▽連載第2部第4シリーズ: 東京女子医大病院「補助人工心臓治験訴訟」

▽連載第2部第5シリーズ: 群馬大学病院「肝臓手術8人死亡」

▽連載第2部第6シリーズ: 東京大学医科学研究所「知らされなかった有害事象」①

 

拡大東京大学医科学研究所=東京都港区白金台
 前回述べたように、筆者と同僚の野呂雅之記者(当時・朝日新聞論説委員、2020年3月まで関西学院大学教授)は、東京大学医科学研究所(東京都港区)が開発したがんペプチドワクチンを使った附属病院での臨床試験において、被験者に起きた消化管出血を「重篤な有害事象」と院内で報告するとともに、臨床試験実施計画書を改訂して消化管出血の恐れのある患者を被験者から外したにもかかわらず、東大医科研が同種のペプチドを提供する他の病院にはその事実を知らせていなかったことを報
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筆者

出河 雅彦

出河 雅彦(いでがわ・まさひこ) 

 1960年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。産経新聞社を経て、1992年、朝日新聞社入社。社会部、科学医療部などで医療、介護問題を担当。2002~2013年、編集委員。2013~2016年、青森総局長。医療事故や薬害エイズ事件のほか、有料老人ホームや臨床試験について取材。2021年4月からフリーランス。
 著書に『ルポ 医療事故』(朝日新聞出版、「科学ジャーナリスト賞2009」受賞)、『混合診療』(医薬経済社)、『ルポ 医療犯罪』(朝日新聞出版)、ルポライター鎌田慧氏の聞き書き『声なき人々の戦後史』(藤原書店、第16回「パピルス賞」受賞)。橳島次郎氏との共著に『移植医療』(岩波書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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