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ベテラン記者のコロナ禍ワクチン接種体験 なぜ予約をとれたか

村山 治

 東京と京阪神に3回目の緊急事態宣言が発出されるなど、新型コロナウイルスの感染は一向に収まる気配がない。その中で、感染防止の決め手とされるワクチン接種がようやく始まり、70歳の私は4月20日、1回目の接種を受けた。対象となる65歳以上の高齢者約3600万人のうち接種できたのは同日の時点で約2万8000人。1万人に7人強の狭き門に私は運よく入れたのである。接種予約をめぐる混乱が起き、接種できなかった人の政府に対する恨み節も聞こえた。背景にあるのは、ワクチン行政の失敗だ。ノーベル賞学者を輩出し科学技術立国を誇った日本でなぜ、こういうことが起きるのか。多くを考えさせられた1か月だった。

●接種クーポン券

拡大ワクチン接種のクーポン券(画像の一部を加工してあります)
 東京都八王子市に住む私(70歳)と妻(66歳)に、八王子市役所から「新型コロナウイルスワクチン接種クーポン券」が届いたのは3月下旬。4月12日 に始まる高齢者枠での接種案内だった。

 新型コロナワクチンは当面は供給量が限られることもあり、優先順位が決められている。 「医療従事者(約480万人)」、「65歳以上の高齢者(約3600万人)」、「基礎疾患のある人(約1030万人)」、「高齢者施設などで働く人(約200万人)」、「60~64歳の人(約750万人)」、「それ以外の人」の順で接種することになっている。

 接種の実施方法などは自治体の裁量に委ねられており、八王子市の場合は、4月5日に先着順で予約開始。同12日から21日まで市役所本庁舎ロビーなどで接種することはNHKの報道などで承知していた。

 八王子市には接種対象の65歳以上の高齢者が約16万人。対して最初に市に届くワクチンはその約1%の1950人分しかない。しかも、先着順。電話かネットで予約をとることになっているが、当然、申し込みが殺到し、予約をとれる確率は低い。3月21日には2回目の緊急事態宣言も解除されていた。妻と顔を見合わせ、「こりゃ、とても無理だわ、接種はあとでいいよね」と通知の封も切らずに放置した。

●参戦

 事情が変わったのは、その数日後。妻が市内の知人から「うちは、受付開始の午前9時から手分けして電話やネットにかけまくるわよ」という話を聞いてきてからだ。

 3月21日に緊急事態宣言が解除された後、都内の感染者数は緩やかに増加していた。変異株の感染拡大も伝えられ、いずれ、感染爆発になる心配を、テレビで専門家が連日、語っていた。

 考えてみれば、私自身、重症化しやすいとされるハイリスクの高齢者だ。痛風、高血圧などで4種類の投薬治療を受けている。さらに、以前に比べコロナ自粛で機会が減ったとはいえ、仕事柄、必要な対面取材がある。取材相手に感染させても、させられても、周辺を含め迷惑をかける。ワクチンの効能が報道などで伝えられている通りなら、接種はリスクの軽減に一定の効果を期待できる。ならば、接種の機会があれば、さっさと打つべきだ、と考え直した。

 「うちもやろうよ」

 「やるか」

 通知を開封して予約手続きを確認した。市の予約管理ウェブサイトにパソコンかスマホで必要事項を記入して申し込むか、コールセンターに電話で申し込むことになっていた。私がパソコン、妻が電話申し込みと分担を決め

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筆者

村山 治

村山 治(むらやま・おさむ) 

 徳島県出身。1973年、早稲田大学政経学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。2017年11月、フリーランスに。この間、一貫して記者。
 金丸脱税事件(1993年)、ゼネコン事件(93、94年)、大蔵汚職事件(98年)、日本歯科医師連盟の政治献金事件(2004年)などバブル崩壊以降の政界事件、大型経済事件の報道にかかわった。
 著書に「安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル」(文藝春秋)、「市場検察」(同)、「特捜検察vs.金融権力」(朝日新聞社)、「小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争」(朝日新聞出版)、「検察: 破綻した捜査モデル」(新潮新書) 。共著に「ルポ 内部告発」(朝日新書)、「田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察『栄光』の裏側」(朝日新聞出版)、「バブル経済事件の深層」(岩波新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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