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賃貸住宅管理業の登録制度、来月から 業法の全面施行で

江刺 良太

 昨年6月に成立・公布され、サブリース事業の規制に関する部分が先行して施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(以下「賃貸住宅管理業法」又は「法」)が、本年6月15日に全面施行され、賃貸住宅管理業の登録制度が始まる。賃貸住宅管理業法制定の背景は2020年10月21日付「西村あさひのリーガルアウトルック『サブリース事業や賃貸住宅管理業を規制する適正化法施行へ』」記載の通りであるが、賃貸住宅の管理業者とオーナー・入居者とのトラブルが増加し、社会問題化している状況下、賃貸住宅における良好な居住環境の確保を図るとともに不良業者を排除すること等を目的として、登録制度が創設されるに至ったものである。

 賃貸住宅管理業法は、①オーナーから委託を受けて賃貸住宅の管理業務を行う事業者に対して登録義務・行為規制を課す業規制(以下「賃貸住宅管理業規制」)、②賃貸住宅のサブリース事業の適正化に関する規制――の大きく2つの規制により構成されている。このうち、②のサブリース事業の規制については、既に昨年12月15日に施行されているが、今般、①の賃貸住宅管理業規制の施行日及び関連する政省令等が公表され、詳細な規制内容が明らかになったことを踏まえ、本稿では施行日の迫る①の賃貸住宅管理業規制について解説する。

拡大出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法制度概要ハンドブック」

2. 賃貸住宅管理業とは

 賃貸住宅管理業規制は、「賃貸住宅」の賃貸人から委託を受けて「管理業務」を行う事業(以下「賃貸住宅管理業」)を行う者に対して登録義務や行為規制を課すものであるが、対象となる「賃貸住宅」及び「管理業務」はそれぞれ以下の通りである。

 (1) 「賃貸住宅」

 対象となる不動産は、「賃貸住宅」、すなわち人の居住の用に供する家屋(アパートや戸建ての一棟)又は家屋の部分(マンションの一室といった家屋の一部)のみであり(法2条1項)、事業の用に供されるオフィス、倉庫等は含まれない。但し、賃貸の用に供する住宅であっても、「人の生活の本拠として使用する目的以外の目的に供されていると認められるもの」は除外される(同項但書)。具体的には、旅館業法に基づく営業を行う旅館、ホテル、住宅宿泊事業(いわゆる民泊)の用に供されているものは含まれないが(賃貸住宅管理業務等の適正化に関する法律施行規則(以下「規則」)1条)、社宅や旅館業法に基づく営業を行わないウィークリーマンション、マンスリーマンションは賃貸住宅に含まれる。さらに、原則として「賃貸住宅」に該当しない旅館業法や住宅宿泊事業法の対象不動産であっても、「現に」宿泊又はその予約・募集が行われている状態にない場合には「賃貸住宅」に該当する旨の解釈が示されている(以上「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(以下「指針」)第2条第1項関係参照))参照)。

 (2) 「管理業務」

 管理業務とは、以下の①維持保全業務及び②金銭管理業務である。

① 管理委託に係る賃貸住宅の維持保全を行う業務

  •  居室及び居室の使用と密接な関係にある住宅のその他の部分である、玄関・通路・階段等の共用部分、居室内外の電気設備・水道設備、エレベーター等の設備等について、点検・清掃等の維持を行い、これら点検等の結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うこと。
  •  賃貸人のために賃貸住宅の維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理

② 賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務(但し、上記①の業務を併せて行うものに限られる。)

 ①の維持保全業務は、あくまでも賃貸住宅の「維持」と「修繕」を「一貫して」行う業務が対象であり、清掃業者・リフォーム業者等が「いずれか一方のみ」を行う場合や、エレベーターの保守点検・修繕事業者等が賃貸住宅の「部分のみ」について維持・修繕を一貫して行う場合は「管理業務」に該当しない(指針第2条第2項関係参照)。もっとも、どの程度の業務であれば「一貫して」又は「部分のみ」に該当するか必ずしも明確ではない部分もあり、具体的な取扱いについては今後の実務の動向を注視する必要がある。また、②の金銭管理業務については、あくまでも①の維持保全業務を併せて行うものに限られており、例えば、保証会社が賃借人から家賃を受領し、貸主や管理業者に送金するのみの場合やサブリース方式においてサブリース業者が賃貸人の立場で金銭を受領する場合は、いずれも該当しない(国土交通省「賃貸住宅管理業法FAQ集(令和3年4月23日時点版)」(以下「FAQ集」1(2)No.7、2(3)No.9参照)。

 なお、「管理業務」には、維持保全業務を直接受託する場合だけでなく、「賃貸人のために賃貸住宅の維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理」を行うことも含まれる。文言上対象は広範囲であるが、指針及びFAQ集において、(i)オーナーや不動産信託の受益者から資産運用業務を受託するいわゆるアセットマネジメント事業者が(以下「AM」)、資産運用業務の一環として、賃貸住宅管理業者に管理業務を行わせている場合は、AMはオーナー等と同視しうる立場にあるものとして、賃貸住宅管理業を営んでいるものとは解されず、(ii)このようなAMが契約内容の可否の判断及び締結の代理等を行っていたとしても、管理業務を行っているものとは解されない旨の解釈が示されており(指針第2条第3項関係、FAQ集1(2)No.5参照)、他のケースを検討する上でも実務上参考となる。

 また、サブリース事業規制の対象となる「特定転貸事業者」は、維持保全業務を行わなければ登録対象外であるが(FAQ集2(3)No.10参照)、サブリース事業を営む業者は、一般には賃貸人が行うべき賃貸住宅の維持保全を賃貸人の依頼により賃貸人に代わって行っており、賃貸住宅管理業を営んでいると解される旨の解釈が示されている(指針2条3項関係(2)参照)。

3. 賃貸住宅管理業の登録

 (1) 登録義務

 賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受け、5年毎に更新しなければならない(法3条1項・2項)。登録義務は施行日から直ちに生じるが、施行時に既に賃貸住宅管理業を営んでいる者は、経過措置として、施行日から1年間、登録を受けることなく賃貸住宅管理業を営むことができる(法附則2条1項。詳細は後記6参照)。

 (2) 小規模業者の登録免除

 但し、小規模な事業者に対する配慮もなされており、管理戸数が「200戸」未満の事業者は登録を要しない(法3条1項但書、規則3条)。当該事業者も任意に登録を受けることは可能であり、法の趣旨に鑑み登録を受けることが推奨されているが、登録を受けた事業者は賃貸住宅管理業者として各種規制に服することになる。管理戸数は、「入居者との間で締結されることが想定される賃貸借契約の数をベース」として数えるものとされており、例えば、1棟の家屋のうち、台所・浴室・便所等を入居者が共同で利用するいわゆる「シェアハウス」を1棟管理する事業者は、当該シェアハウスが10部屋あり、そのうち4部屋のみを入居者が使用していても、10戸と数えられる。また、一時的に管理戸数が200戸以上となる場合であっても登録を行う必要があるため、200戸以上となる見込みがある場合は登録を受けることが適当である(いずれも指針第3条第1項関係参照)。

 (3) 営利性の要件

 登録を受ける必要があるのは「賃貸住宅管理業を営む」事業者、すなわち営利の意思を持って反復継続的に賃貸住宅管理業を行う事業者に限られ、営利の意思は客観的に判断される(指針第2条第3項関係(1)参照)。この点、無償で管理業務を行う場合であっても、事業全体で営利性が認められる場合には、営利の意思ありと判断される可能性があるため、留意が必要である(FAQ集2(3)No.8参照)。

 (4) 財産的基礎に係る登録拒否要件

 賃貸住宅管理業の登録には一定の財産的基礎が求められる(法6条1項10号)。登録拒否要件である一定の「財産的基礎を有しない者」の基準は、「財産及び損益の状況が良好であること」(規則10条)、具体的には、登録申請日を含む事業年度の前事業年度において、負債の合計額が資産の合計額を超えておらず(債務超過でなく)、かつ、支払不能に陥っていない状態をいうこととされている。但し、債務超過の場合でも、直近2年の各事業年度において当期純利益が生じている場合や、十分な資力を有する代表者からの代表者借入金を控除すると債務超過に該当しない場合等、債務超過でないことと同等又は同等となることが相応に見込まれる場合には、登録拒否要件に該当しない(指針第6条第10号関係参照)。

 (5) 任意の登録制度廃止と特例措置

 法の施行に伴い、現行の国土交通省の平成23年の告示による任意の賃貸住宅管理業登録制度は施行日をもって廃止される。なお、昨年6月末日までに当該登録制度に登録済みの事業者に対しては、特例措置が設けられており、登録番号における更新回数を+1して登録が行われる。

4. 賃貸住宅管理業者の義務

 (1) 業務管理者の選任

 ① 業務管理者

 賃貸住宅管理業者は、営業所又は事務所(以下「営業所等」)毎に、1人以上の「業務管理者」を選任しなければならない(法12条1項)。業務管理者は、営業所等における業務に関し、管理受託契約(管理業務の委託を受けることを内容とする契約)の内容の明確性、管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性その他の賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施を確保するために必要な一定の事項の管理・監督に関する事務を行う(法12条1項、規則13条)。

 ② 業務管理者の要件

 「業務管理者」は、法6条1項1号乃至7号に定める欠格事由に該当しない者で、以下のいずれかの要件を備える必要がある(法12条4項、規則14条)。但し、経過措置として、2020年度までに賃貸不動産経営管理士に合格し、施行日から1年以内に登録を受け、かつ、一定の講習を受講した者については、下記(i)の要件を充足したものとみなされる(規則附則2条)。

 (i) 管理業務に関する2年以上の実務経験を有する者(又は実務経験に代わる講習を修了した者を含む)で、登録試験を合格した者

 (ii) 管理業務に関する2年以上の実務経験を有する者で、一定の講習を修了した宅地建物取引士

 ③ 兼任禁止

 業務管理者は、他の営業所等の業務管理者と兼任することができない(法12条3項)。なお、業務管理者が宅地建物取引業法に基づく専任の宅地建物取引士を兼務することは可能である(指針第12条関係2、FAQ集3(1)No.5参照)。

 (2) 重要事項説明義務

 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約の締結までに、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人に対して、契約の内容・履行に関する重要事項について、書面を交付して説明(以下「重要事項説明」)しなければならない(法13条1項、規則31条)。

 例外的に、専門的知識・経験を有する一定の者(賃貸住宅管理業者、特定転貸事業者、宅地建物取引業者(みなし宅地建物取引業者や例外的に宅地建物取引業を営むことが可能とされている銀行や信託会社を含む)、これらを委託者・受益者とする信託受託者、特定目的会社、不動産特定共同事業を行う任意組合など)に対しては、重要事項説明は不要である(法13条1項、規則30条)。

 重要事項説明は、業務管理者又は一定の実務経験を有する者等によって行われること、及び、賃貸人が契約内容を十分に理解した上で契約を締結することができるよう説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましいこととされている(いずれも指針第13条関係1参照)。また、相続やオーナーチェンジ等により管理受託契約の相手方である賃貸人が変更された場合には、従前と同一内容で承継される場合でも、賃貸住宅管理業者は、変更を認識後遅滞なく、新たな賃貸人に重要事項説明を行う必要がある(FAQ集3(2)No.16参照)。

 (3) 契約締結時交付書面の交付義務

 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約の締結時に、管理業務を委託する賃貸住宅の賃貸人(以下「委託者」)に対し、管理業務の実施方法、契約期間に関する事項、報酬に関する事項等の所定の事項を記載した書面を交付しなければならない(法14条1項)。契約締結時交付書面の交付は、法定記載事項を網羅した管理受託契約の契約書を作成・交付することをもって実施することが可能であり、国土交通省が公表している管理受託契約の雛形(標準契約書)もその前提で作成されている。なお、上記(2)の重要事項説明と異なり、管理業務に係る専門的知識・経験を有する者に対しても交付を省略することができない点に留意が必要である。

 (4) 財産の分別管理義務

 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づき賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費等の金銭の管理を行う業務を行う場合、受領する金銭について、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する金銭と分別管理しなければならない(法16条)。具体的には、①「自己の固有財産」との「口座」による分別管理と、②「管理受託契約毎」の「自己の帳簿」による分別管理が求められている(規則36条)。

拡大

 ①の口座による分別管理は、あくまでも自己の固有財産と管理業務により受領する金銭とに分けることで足り、管理受託契約毎に分けて管理することまでは求められておらず、②の管理受託契約毎の金銭の区別は、自己の帳簿(電磁的記録も可能)を作成することにより分別管理を行うことが可能である。また、①の口座により分別管理においても、管理受託契約に基づき管理する賃貸住宅に係る家賃等を固有財産を管理する口座で受け取ることは妨げられず、その場合、速やかに管理業務の専用口座に移し替えることで足り、その逆も同様である(FAQ集3(3)No.7参照)。

 (5) 一括再委託禁止

 賃貸住宅管理業者は、委託を受けた管理業務の「全部」を他の者に対して再委託してはならない(法15条)。管理業務の「一部」の再委託を行うことは可能であるが、再委託先の指導監督を行わず、全てについて再委託することや、管理業務を複数の者に分割して再委託して自ら管理業務を一切行わないことは本条に違反するものとされている。なお、再委託先には法の規制は及ばないが、登録拒否要件に該当しない事業者に再委託することが望ましく、また、賃貸住宅管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが求められている(以上指針第15条関係1・2、FAQ集3(3)No.4・No.5参照)。

 (6) その他の義務

 上記の他、賃貸住宅管理業者は、委託者に対する定期報告義務(法20条)、信義誠実義務(法10条)、名義貸し禁止(法11条)、証明書の携帯・提示義務(法17条)、帳簿の備付・保存義務(法18条)、標識の掲示義務(法19条)及び秘密保持義務(法21条)等の義務を負う。

5. 監督

 規制の実効性を担保するため、国土交通大臣は、必要があると認めたときは賃貸住宅管理業者に対して業務改善命令を発することができ、その他法令や命令等に違反した場合等には1年以内の業務停止又は登録の取消しを命じることができる(法22条から27条)。また、無登録で賃貸住宅管理業を営んだ場合や各種の規制に違反した場合には、罰則の対象となる(法41条以下)。

6. 経過措置及び施行日前後の取扱について

 (1) 登録義務の猶予と行為規制

 施行時に既に賃貸住宅管理業を営む者は、原則として、施行日から1年間、登録を受けることなく、賃貸住宅管理業を営むことができる(法附則2条1項)。また、そのような者が施行日から1年以内に登録申請した場合、登録を完了せずに1年が経過したとしても、当該申請について登録(又は登録の拒否の処分)されるまで、同様に賃貸住宅管理業を営むことができる。但し、経過措置により賃貸住宅管理業を営む事業者は、賃貸住宅管理業者とみなされ、また当該営業所等の代表者又は準ずる地位にあるものは業務管理者とみなされ、各種規制が適用される(法附則2条2項)。

 (2) 施行前に締結された管理受託契約の取扱い

 施行前に締結された管理受託契約についても、原則として、施行日から賃貸住宅管理業法の規定が適用される。例外的に、①契約締結時交付書面の提出義務(法14条1項)及び②定期報告義務(法20条)は課されないが(法附則3条)、当該管理受託契約が更新される際の運用が両者で異なる点に留意が必要である。具体的には、①契約締結時交付書面については、「契約の根幹に関わる事項について従前と異なる内容に変更」される場合に、新たな契約の締結と同視して、契約締結時交付書面の交付が必要とされる一方、②定期報告義務については、「形式的な変更」と認められる場合でも、更新後は定期報告を行うべきとされている(指針第20条関係1、FAQ集3(2)No.14参照)。

7. おわりに

 賃貸住宅管理業登録制度の施

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筆者

江刺 良太

江刺 良太(えさし・りょうた) 

  2006年、早稲田大学法学部卒業。2007年、第二東京弁護士会登録。2015~2016年、みずほ銀行ロンドン支店出向。2017~2018年、三井住友銀行出向。現在は西村あさひ法律事務所のパートナー弁護士として、不動産の流動化・証券化、REITその他の不動産ファイナンス、不動産取引全般、プロジェクトファイナンスを中心に担当。
 主な書籍・論文に『〔新金融実務手引シリーズ〕資産・債権の流動化・証券化【第2版】』(2010年)、『REITのすべて【第2版】』(2016年)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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