本田由紀
2010年08月10日
同じ時期に、乳幼児2名が部屋に閉じ込められたまま放置されて死に到るという悲惨な事件があった。これに限られず、虐待やネグレクトが子供の死を招いた事件は相次いで発生している。
社会成員の中で、もっとも弱く、他者からのケアを必要とする、ライフコースの初期・末期の両端に位置する存在が、いずれも家族の中に押し込められたまま、その存在を抹消されている。こうした事態を知るにつけ、いかにこの社会の「底が抜け」ており、その中で個人を守る最後の拠り所とみなされている家族も、強固に閉じたまま拠り所として機能しなくなり始めているかを痛感する。
日本の家族は、その内部に抱えている問題を外部に知られること、さらには外部に助けを求めることを、とことん忌避しようとする。それらは究極の「恥」であり、また「他人様には口出ししてもらいたくないこと」なのである。その家族がどれほど物質的基盤を欠いて困窮にあえいでいたり、あるいはどれほどメンバー間の関係のこじれが病理的様相を呈していたりしようとも、である。そうしてしばしば家族は問題を抱えたまま自滅してゆく。
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