三浦展(みうら・あつし) 三浦展(消費社会研究家、マーケティングアナリスト)
消費社会研究家、マーケティングアナリスト。1958年生まれ。一橋大社会学部卒業。情報誌『アクロス』編集長や三菱総合研究所主任研究員を経て、消費・都市・文化研究シクンタンク「カルチャーズスタディーズ研究所」主宰。著書に『「家族」と「幸福」の戦後史』『下流社会』『ファスト風土化する日本』『シンプル族の反乱』『マイホームレス・チャイルド』など。
三浦展
こうした行方不明の背景には、しばしば家族間の不和があると思われる。そうでなければ何十年も電話一本かけないはずはない。最初は仲のよかった家族が、介護問題、相続などの金銭問題などを契機に不和に陥ることは十分にありうる。家にいたたまれなくなった老人がふと家出をすることもあるだろう。みずからがみずからを姥捨てに行った可能性もある。もちろん徘徊癖があった可能性もある。独居老人だった場合、近所づきあいが少ない人であれば、どこかに消えても誰も気づかないことも大いにあり得る。そう考えると、100歳以上の高齢者に、1000人に1人くらいの割合で行方不明者がいることは、それほど驚くに値しないのかも知れない。
何十年も連絡を取ろうとしなかった子どもは、親の保護・養育を放棄(ネグレクト)をしたとも言える。だが、子どものほうももはや高齢者なのだ。親と同居しても、「老老介護」の負担は大きく、「認認介護」の危険性も高い。子どもの無関心を責めるのもかわいそうな面がある。
常識的に考えると、行方不明となった高齢者が、どこかで元気に生きている可能性は低い。巨額の資産をいつも鞄に入れて歩いていた永井荷風ならいざしらず、普通の老人が何十年もひとりで暮らせるとは思えない。一時的にホームレス暮らしをした可能性もある。いずれにしろ、すでにずっと以前に亡くなっていると考えたほうが自然だ。
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