本田由紀(ほんだ・ゆき) 本田由紀(東大教授)
東大教授。1964年生まれ。東大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。日本労働研究機構研究員、東大社会科学研究所助教授などを経て、2008年から東大大学院教育学研究科教授。専門は教育社会学。教育・仕事・家族という三領域間の関係に関する実証研究を主として行う。著書は『若者と仕事』、『多元化する「能力」と日本社会』ほか。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
内閣府が7月末に発表した調査結果では、ひきこもり人口が70万人と推計されている。
ただし、公表されている報告書によれば、そのうち「狭義のひきこもり」(「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが、家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」のいずれか)は3分の1であり、それ以外の3分の2は「趣味の用事のときだけ外出する」層であることには注意が必要である。さらに、70万人のうちの4分の1は、現在の状態になったきっかけが「病気」と答えている。
この調査では「ひきこもり」を操作的に抽出する際に、きっかけが「病気」である者の中で具体的な病名として「統合失調症又は身体的な病気を記入した者」は除外されているにも関わらず、「病気」をきっかけとした者がかなりの比重で存在するということは、おそらく統合失調症以外の精神疾患(うつ病など)が「ひきこもり」として計上されているものと推測される。
このように、人口規模の推計方式に関してはいくつか割り引いて考えなければならない要素がある。また、調査における実際のサンプル数は、「狭義のひきこもり」が20名、広義まで含めても59名であり、そうした限られたサンプルに見られる傾向を過度に一般化することにも慎重でなければならない。
それらの点に留意した上ではあるが、この調査で「広義のひきこもり」に該当する者の回答には、一定の特徴が見出される。ひとつは、
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?