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ひきこもり=撲滅対象、ではない

伊藤智章

伊藤智章

 そもそも「減らせるか」という問題設定を、疑問に思う。ひきこもり=悪いこと、減らすべきこと、という視点は、単純にすぎないか。

 06年、名古屋市のひきこもり自立支援施設で、監禁致死事件が起きた。東京からひきこもりの若者を強制的に連れだし、鎖で縛って死なせてしまった。あの取材を通じて感じたのは、相手を見下し、立ち直らせるためなら多少手荒なことをしてもいい、という社会の側の傲慢さだ。

 それで「立ち直った」ケースもあったというが、暴力支配が心に残す傷を考えないのが不思議だった。

 ひきこもっていればいい、というのではない。でも無理に引き出させたり(日本には、「引き出し屋」という仕事まであるのだ!)、異端視したりする姿勢こそ、彼らをさらにかたくなにし、追い詰めていないか。復帰すべきという社会の異常さも謙虚に考えるべきだと思う。

 今回の内閣府アンケートは、「ひきこもり70万人」という数字よりも、回答内容が興味深かった。「ふだん自宅でよくしていること」として、ひきこもりの人たちは「本を読む」が67%で、一般の倍近かった。「新聞を読む」は32%で、やはり10ポイント以上高い。一方で、「テレビを見る」は、一般の81%より低い67%。

 これだけみれば、とりわけ新聞記者の私としては、むしろシンパシーを感じてしまうところだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

伊藤智章

伊藤智章(いとう・ともあき) 

朝日新聞宮古支局長(岩手県)。1960年生まれ。88年入社、名古屋、東京社会部などを経て、05年から論説委員(名古屋在勤)。名古屋報道センター員兼論説委員を経て、11年6月から現職。東海3県の行政、事件、裁判関係の論説記事を担当。水問題を中心とする環境、自殺問題などについても執筆。共著に『ドキュメント官官接待』など。

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