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虐待防止に「育児の困難」を学校で教えよ

澁谷知美

澁谷知美 東京経済大准教授(社会学)

 子ども虐待が後を絶たない。今年1月、3月には、両親の暴行により幼い命が奪われる事件が発生した。そして、7月には大阪市西区で子ども置き去り事件が発覚。ゴミが堆積する部屋で、3歳児と1歳児の遺体が一部ミイラ化した状態で発見された。

 児童虐待にどう対応すべきか。すでにある提案から拾えば、児童相談所の人員を増やし、こまめな対応ができるようにすることや、貧困に起因する虐待を減らすため、仕事・住居・育児の面において低所得家庭をサポートすることなどがある。児童相談所の介入が容易になるよう、さらなる法の整備を求める声もある。

 これらは、「虐待が起こった後」もしくは「子どもが生まれた後」の対処法だ。これとともに、「子どもが生まれる前」に、なんらかの手を打つことはできないだろうか。

 西区の事件が報道される前日の新聞に、金原ひとみ氏が、献身的な母という役回りを選択するしかない状況で、それが容易だったということだけが理由で母となる女性がいることを、彼女たちに共感的な筆致で書いていた(『東京新聞』2010年7月29日朝刊)。

 もっともな指摘だと思う。女が結婚した上で母になることは称揚されるが、結婚せずに母になること、独り身でいること、男以上に稼ぐことなどは称揚されず、そうした選択肢は予めつぶされているのがこの社会である。

 そんななかで、

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