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『1Q84』があれほど売れ、あれほど話題になったのに、文藝評論家たちはこの小説の社会性をあまり論じていないような気がする。唯一この小説を1960年代から70年代、80年代、90年代を経由して現在に至る社会的文脈の中で、かつ連合赤軍からオウム真理教まどの「若者の反乱」の文脈の中で論じたのは社会学者の大澤真幸だけだ(『THINKING「O」 』〈4号〉 特集:もうひとつの1Q84、左右社)。

 ところが大澤の分析ですら、『1Q84』が東京論でもあることをなぜか指摘していない。『1Q84』では村上春樹にしては珍しく実在の地名が多数登場する。そして「高円寺」にこだわっている。この小説は天吾と青豆という二人の男女が主人公だが、高円寺は天吾の住んでいる場所だし、登場人物たちは磁場に引き寄せられるように高円寺に集まってくる。対して青豆は「高円寺」とは(特に1984年当時には)まったく対照的な街である「自由ヶ丘」に住んでいる。だから、同じ東京にいながら、この二人はなかなか出会わないし、途中まではお互いが同じ東京にいるということさえ知らない。高円寺のアパートを根城にした独身男性と、自由が丘のアパートに住む独身女性の行動範囲は決して交わらないのである。 ・・・ログインして読む
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筆者

三浦展

三浦展(みうら・あつし) 三浦展(消費社会研究家、マーケティングアナリスト)

消費社会研究家、マーケティングアナリスト。1958年生まれ。一橋大社会学部卒業。情報誌『アクロス』編集長や三菱総合研究所主任研究員を経て、消費・都市・文化研究シクンタンク「カルチャーズスタディーズ研究所」主宰。著書に『「家族」と「幸福」の戦後史』『下流社会』『ファスト風土化する日本』『シンプル族の反乱』『マイホームレス・チャイルド』など。

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