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警察の誤認逮捕が招くもの

緒方健二

緒方健二 元朝日新聞編集委員(警察、事件、反社会勢力担当)

 石川県内で昨年あった現金窃盗事件で、石川県警が容疑者として逮捕した男性は犯人ではありませんでした。金沢地検に起訴された男性に金沢地裁は9月1日、無罪判決を言い渡しました。それまでの公判で、防犯カメラに映っていた犯人とは別人との鑑定結果が出ていたため検察側が上訴権を放棄し、無罪が確定しました。

 無罪判決を言い渡した裁判官の「ずさんだったと言わざるを得ない」との捜査批判を待つまでもなく、警察と検察による大失態です。警察庁の安藤隆春長官は9月2日の定例会見で「きわめて遺憾。あってはならないこと。絶無を期すため、捜査の基本を尽くすよう全国警察を指導して参りたい」と述べました。

 富山県警による強姦事件の冤罪「氷見事案」や、鹿児島県警摘発の選挙違反無罪確定「志布志事案」で再発防止を約束したはずなのに、数年後にこの体たらくです。緊張感が感じられない。志布志と氷見の失態を受けて警察庁は07年、捜査の基本を尽くすよう指示する通達を全国の警察本部に出しました。容疑者が自供している場合でも物的証拠との間に矛盾がないかなどを十分に吟味せよ、との内容です。ごく当然のことですが、それが守られていない。

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