大矢雅弘
2010年09月28日
いまや全国的に最も注目される市長の一人と言えるのではないか。その言動が何かと物議をかもしてきた鹿児島県阿久根市の竹原信一市長のことだ。市長に対する解職請求(リコール)を求め、有権者の過半数に達する1万人以上の署名が提出され、解職の賛否を問う住民投票が現実味を帯びてきた。阿久根市の事例は、地方自治の枠組みをも揺るがす論議に及んでいる。
竹原市長は一昨年8月、議員定数や職員給与の削減などを訴えて市長に初当選した。自身のブログに「辞めてもらいたい議員のアンケート」を掲載するなどし、議会が市長不信任決議を可決すると、議会を解散した。選挙後の臨時議会が2度目の不信任決議を可決、竹原市長は失職したが、昨年5月、接戦を制して再選を果たした。
閉塞(へいそく)感が漂う地域経済の現状も影響したのだろう。阿久根市は鹿児島県北西部にある人口2万4千人の小さな市だ。街の疲弊が目立ち始めたのは、2004年3月に九州新幹線の一部開通以降という。特急が止まっていた阿久根駅は新幹線ルートから外れ、JR九州が撤退して第三セクターのローカル線の駅となった。
人はだれしも、自分よりも恵まれた人をうらやみがちだ。「市職員が厚遇されすぎだ」という感情に訴えて支持を広げるのは典型的なポピュリズム(大衆迎合主義)の手法といえる。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください