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大阪地検検事の改ざん事件に、志布志事件が重なる

大久保真紀 朝日新聞編集委員(社会担当)

 大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)が押収していたフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして逮捕された事件を見ていると、以前、取材した鹿児島県で起きた志布志事件が私の中では重なります。検察と警察との違いはありますが、非常によく似ています。

 志布志事件は、2003年の鹿児島県議選をめぐって、初当選した県議がその妻らと共謀して投票依頼の目的で4回の買収会合を開き、住民11人と計191万円の現金を授受したとして、15人が逮捕、県議と妻、住民ら計13人が起訴されたものです。しかし、2007年2月に全員が無罪判決を勝ち取り、確定しました。鹿児島市から車で3時間以上かかる宮崎県境にある志布志市で事件が起こったことから「志布志事件」と呼ばれています。

 私は2006年から鹿児島総局のデスクに赴任し、総局の若い記者たちの取材を統括する立場にありました。赴任したときには、起訴され、裁判が進行中の事件でしたが、当初は犯行を認めていた6人が公判中に否認に転じ、さらに、起訴状で、4回の買収会合の日時が特定されていないことに気づいて、遅まきながら、「この事件はおかしくないか」と取材を始めたものです。捜査関係者の中に複数の情報提供者を得て、無罪判決が出る1年近く前から、捜査そのものに問題があり、警察による「でっちあげ」事件の可能性が高いということを報道しました。捜査会議で「捜査の方法に問題があるのでは」と発言した捜査員が翌日捜査からはずされたり、買収会合が開かれたとされる場所での現場検証で元被告の座っていた位置を捜査指揮をとっていた署長自らが指示して、座らせたりしていたことなどを次々に明らかにしました。判決も、買収会合は存在しなかった可能性が高いと判断し、「強圧的な取り調べが行われたことをうかがわせる」としたのです。

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