メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

報道事業の「収益のヘルシーさ」が本質

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 インターネットの技術がジャーナリズムの強力なツールとなってすでに10年ほどの歴史が経った。個別状況において、専門家や一般人も含めたネットジャーナリズムの発信内容に、ある種の真実や早い情報や正しい情報が載っている事実は積極的に認めるべきである。

 その上で、24時間365日全国あるいは世界中からニュースを拾って、国民にとって重要か否か、という恣意的判断で選んだ情報を、無駄の省かれた定型のテキストにし、さらに選び抜いた一部のテキストを媒体に載せて、多くをボツにしていく、という知的生産作業は、社会に欠かしてはいけない。現状のマスコミとネットジャーナリズム双方に運営上の問題点はあるが、高度に訓練された組織と人が対応することが、報道機関の社会的責務として必要である。

 現在ネットジャーナリズム企業体が抱えていると思われる、報道機関としての課題は、かつて現・マスコミ企業が遠い昔に通ってきた課題に過ぎない。報道内容の信憑性や事実確認の充実、速報性の担保など、いずれネットジャーナリズム企業体が解決していくことになるだろう。一方でネットジャーナリズムを苦々しく思っているかもしれないマスコミ側も、すでにインターネット技術とネットジャーナリズムが生成したニュースコンテンツをある程度活用せざるを得なくなっており、ネットジャーナリズムの課題は、新旧双方のプレイヤーによっておのずと解決されるだろう。

 現在のネットジャーナリズムの問題の本質は、その点ではない。ジャーナリズムとメディアビジネスとの関係が「ヘルシー」な状態になっていないことのほうにあると考える。

 落書や瓦版以来の歴史をかんがみるに、ジャーナリズムとは本来的に高収益の事業ではなく、根源的には権力のチェックを目的とした非営利の活動である。その活動を最小限支えるために、国民(読者)に納得してもらえる程度の「ヘルシーな収益源(課金、広告)」を読者から得ることによって、第四の権力たる信頼を国民から得てきたという点は、あまり注目されていない。まったくの非営利では報道活動が成り立たないことくらいは、もう国民は直感的に理解できる。ああ、このお金は取材と編集に使われていて、ちゃんとした記者とデスクが記事を作っているのだから、記事を読むためのこのお金は払ってもいいのだろう、という感覚が重要である。

 しかし、 ・・・ログインして読む
(残り:約995文字/本文:約1971文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

倉沢鉄也の記事

もっと見る