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調活費“口封じ”逮捕から始まった腐敗--伊藤鉄男・最高検次長検事への手紙

魚住昭

魚住昭 魚住昭(ジャーナリスト)

 拝啓、伊藤鉄男さま。先日は検察庁地下一階の記者会見場で約20年ぶりにお目にかかったのに、ろくにご挨拶もせず、ぶしつけな質問をして申し訳ありませんでした。

 私は検察がこの未曾有の危機を乗り越え、新たな組織として再生することを心の底から願っています。しかし、そのためには最高検の要職にある方々に重大な決断をしていただかなければなりません。だから、私はいきなり「調活費問題を再調査するつもりはありませんか」と、あなたに尋ねたのです。

 調活費問題とは、あなたもご承知のはずですが、1999年ごろまで検察幹部の交際費などに充てるために行われていた裏金作りのことです。年間総額は5億円前後。調査活動費名目で架空の領収書をつくって裏金をプールする手口などについては三井環・元大阪高検公安部長や元検察事務官らが詳細に証言しています。私も元検察幹部らに事実関係を確認しましたが、裏金づくりが組織的に行われていたことに疑う余地はありません。

 しかし、あなたは私の質問を軽く受け流し「もう終わった話じゃないですか」と言われました。ほとんど予想通りの答えとはいえ、私は残念でなりませんでした。

 調活費問題は決して「終わった話」ではありません。本来なら、問題が発覚した当時の原田明夫・検事総長が裏金づくりの事実を認め、国民に謝罪すべきだったのです。ところが原田総長は02年4月、裏金作りを内部告発していた三井元部長を大阪地検特捜部に“口封じ”逮捕させ、調活費問題を闇に葬ってしまいました。

 私は後に元検察高官に「あの事件は客観的に見ると口封じ逮捕ですよね」と尋ねたことがあります。その元高官は「馬鹿なことを言うんじゃない」と答えました。私は一瞬「この人は、退官してもまだ組織を守ろうとしているのか」と思いましたが、元高官はつづけてこう言いました。「客観的に見なくたって、口封じ逮捕だよ」 ・・・ログインして読む
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筆者

魚住昭

魚住昭(うおずみ・あきら) 魚住昭(ジャーナリスト)

ジャーナリスト。1951年、熊本県生まれ。一橋大法学部卒。75年、共同通信社入社。社会部記者として87年から司法クラブに在籍しリクルート事件などを取材。96年退社。司法分野や人物フィクションの執筆をしている。著書に『特捜検察』『渡邉恒雄 メディアと権力』『特捜検察の闇』『野中広務 差別と権力』(講談社ノンフィクション賞)など。2014年6月、WEBRONZA筆者退任

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