本田由紀(ほんだ・ゆき) 本田由紀(東大教授)
東大教授。1964年生まれ。東大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。日本労働研究機構研究員、東大社会科学研究所助教授などを経て、2008年から東大大学院教育学研究科教授。専門は教育社会学。教育・仕事・家族という三領域間の関係に関する実証研究を主として行う。著書は『若者と仕事』、『多元化する「能力」と日本社会』ほか。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
本田由紀
それはさておき、「草食系男子」に話を戻すならば、仮にそれが「マッチョでない男性」つまり女性に対する身体的・社会的優越をふりかざしたり女性を自らの価値を高めるための装飾品とのみみなしたりすることのない男性を意味しているとしたとき、私はそのような男性類型が登場し、増加が語られていることを望ましいことだと思う。
性別役割分業規範に基づく様々な男女間の不平等がことのほか強い日本社会において、それを掘り崩すような意識と行動が、むしろ男性の側から現れていることはとても興味深い。女性の側から尊厳や権利を主張するフェミニズムに関してはこの社会でも一定の歴史と蓄積があるが、男性側からの不平等解消の主張は希薄だったからだ。しかも「草食系男子」は主張ですらなく、存在であり現象である。机上の理念や肩肘張ったスローガンでなく、男性性にこだわらないふるまいや考え方を体現している若者が自然発生しているということは、より確実な社会変化を物語る。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?