速水徹
2010年10月29日
注目を集めた、プロ野球の新人選択(ドラフト)会議。早大の投手、大石達也は最多6球団から1位指名を受け、西武が残りくじの幸運に恵まれ、交渉権を獲得した。全12球団の半数が1位に指名した事実は、高い奪三振率を誇る本格派右腕の大石が今年のドラフトでは随一の素材であることを物語っている。しかし、ファンの最大の関心はやはり、同じ早大・斎藤佑樹の交渉権をどこが得るか、にあったろう。
斎藤は大石に次ぐ4球団に1位指名され、抽選で日本ハムが交渉権を得た。高校時代から常に注目を浴びてきた斎藤が、ついに、プロの舞台へと歩みを進めることになる。
今回のドラフト会議を前に、「ハンカチ世代」という言葉が新聞紙上などで躍った。弊紙でも「実力派選手ぞろいの『ハンカチ世代』が運命の1日を迎える」などと触れていた。しかし、浮ついた印象がぬぐえず、どうも好きになれない言い回しだ。
由来はご存じの通り、斎藤のかつての「愛称」である。4年前の甲子園で、投球の合間に青いハンカチで汗をぬぐったことが話題を呼び、その端正な顔立ちもあって「ハンカチ王子」と人気を集めた。ここから、逸材がそろう彼らの年代を総称して「ハンカチ世代」と多くのマスコミが呼んできたのだが、いまだにこの言い方はしっくりこない。
では、「斎藤世代」か。それとも、斎藤と甲子園で死闘を演じた、楽天の田中将大の名を取った「田中世代」か。個人的には、いずれも違う、と思う。
長い、とおしかりを受けそうだが、「田中・斎藤世代」、もしくは「斎藤・田中世代」と2人の名前を冠するのが、この世代の呼び名にはふさわしい。どちらかひとつを、と問われれば、高校2年生にして甲子園の頂点を極め、3年生で斎藤と歴史に残る投手戦を演じた末、先にプロ入りして実績を残している田中の名前が最初に来るのが筋である、と私は思う。それでもやはり、「田中世代」だけでは言い足りない。来季、プロのマウンドで相まみえることになるであろう2人の存在は、ある意味、「不可分」な側面があるのだから。
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