丹治吉順
2010年11月08日
「電子教科書などと大上段に構えるのではなく、副教材から電子化を進めたらいいんじゃないですかね」。別件の取材の打ち合わせ後、雑談になった際、モバイルブック・ジェーピーの佐々木隆一会長はこう語った。日本の電子書籍や音楽配信などのデジタルコンテンツビジネスを長い間手がけ、大日本印刷、凸版印刷や大手出版社が手を組んだ電子出版制作・流通協議会の設立に奔走した人でもある。その場で即座に同意してしまった。
教科書を電子化するとなると、児童・生徒に配布するための端末をどうするのかという問題が真っ先に持ち上がる。また、教育の基準になる教科書なので、細かいところまで遺漏があってはならない。あらゆる意味で、「電子教科書」は「大ごと」なのだ。
こういうとき、「中心」や「正面」を突破しようとしても、労力とコストばかりかさんで、うまくいかないことが多い。イノベーションの多くは「周辺」の「小さな」「安価な」領域をまず手中に収めて、そして「本丸」へと進む。これは効率という点でも悪くない。「周辺」で「小さい」段階にいる間に、その技術や方式が使えるものかどうかという検証も済ますことができる。
電子教科書を「本丸」とすれば、「周辺」に当たるのは副教材や副読本だろう。特に理科や社会には有用だろう。実験や自然の映像、あるいは歴史的資料などを、インターネット経由で利用できるようにしておき、教室からアクセスして利用するという形にすれば、最新のデータを反映させ、しかも授業をより印象的にすることができる。
かかる費用も、仮に生徒一人ひとりに端末を配るとなると、1クラス40人とすれば200万円だが、40型の液晶ディスプレーなら10万円前後で済む。
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