大矢雅弘(おおや・まさひろ) ライター
朝日新聞社で社会部記者、那覇支局長、編集委員などを経て、論説委員として沖縄問題や水俣病問題、川辺川ダム、原爆などを担当。天草支局長を最後に2020年8月に退職。著書に『地球環境最前線』(共著)、『復帰世20年』(共著、のちに朝日文庫の『沖縄報告』に収録)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
大矢雅弘
仲井真氏、伊波氏のいずれが当選しても、辺野古への移設のハードルはきわめて高い。仲井真氏が「県内移設反対」と公言していないことで、仲井真氏が再選されれば、交渉の余地が出てくるとの希望的観測も政府にはあるかもしれない。
だが、名護市長が「県内移設」容認であった時代でさえ、13年間もの年月をかけても政府が地元に基地建設を受け入れさせることはできなかったのだ。いま、沖縄の政治状況は一変している。
移設先となった名護市では今年1月、辺野古移設に明確に反対する稲嶺進市長が当選し、9月の名護市議選でも稲嶺市長を支持する勢力が大勝した。与党時代に辺野古移設を進めた自民党県連も県内移設反対に転換。県議会も県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書を初めて与野党全会一致で可決している。
普天間の移設先を一度は「最低でも県外」と請け負った鳩山由紀夫前首相は迷走のあげく、自民党政権時代の「辺野古」に回帰して辞任した。菅直人首相は辺野古回帰を盛り込んだ5月の日米合意の履行をオバマ大統領に伝えたが、日米合意はすでに破綻している。
菅首相が県内移設にこだわるかぎり、いずれは「沖縄の民意」と対米交渉のはざまで立ち行かなくなることは明らかだ。進退問題にまで追い込まれる可能性さえあるのは目に見えている。
ここは、沖縄県民をはじめ、日本国民の同意を得られない事実を米国に突きつけ、日米合意の見直しに向けた対米交渉を急ぐべきである。
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