緒方健二
2010年11月13日
東京・霞ヶ関にある警視庁と、その隣にある警察庁はいま、どんよりとした空気に覆われています。どちらも元々明るさを売り物にする役所ではありませんが、警察の内部資料とみられる国際テロ関連情報の大量流出で空気の重さはいや増しています。
警察の内部資料がインターネット上に流れ出た事例はこれまでに数々ありました。最近では警視庁北沢署と愛媛県警の流出の規模が大きかった。北沢署のケースは、巡査長の自宅パソコンから約1万2千人分の個人情報が漏れました。強姦事件被害者の女性の名前や住所のほか、事件捜査に協力した人やストーカー被害で警察に相談した人の情報もありました。巡査長が同僚の外付けハードディスクから、わいせつ画像をファイル交換ソフト「ウィニー」の入った私有パソコンにコピーしたのが原因です。こんなつまらないことで、ネット上に情報をさらされ、報復の恐怖におびえなければならなくなったのではたまりません。
愛媛県警の方は約6200人分の情報が漏れました。やはりウィニー経由の流出です。殺人や窃盗事件の関係者の供述調書のほか、少年法で氏名の公表が禁じられている少年事件の関係者の情報に加え、道路を通過した車両を記録する警察の捜査道具、「Nシステム」データもごっそりと出ました。
どちらも警察の情報管理のぬるさを世間にさらした大失態です。けれども警察が受けた衝撃の大きさは、今回の国際テロ情報流出の比ではないようです。警察幹部の1人は、1995年3月に國松孝次・警察庁長官(当時)が銃撃された事件を引き合いに出し、「長官銃撃よりも受ける傷は大きい。回復の目処すら立たない」と語ります。長官銃撃事件は、全国警察がオウム真理教と闘っているさなかに起きました。捜査指揮の最高責任者である長官が撃たれ、しかも犯人検挙ができずに今年3月に公訴時効を迎えました。警察史上最も恥ずべき事件と警察内部で言われています。その事件を超える衝撃だといいます。
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