メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「ニュースにだまされるな!」児童虐待、不明老人…家族は崩壊しているのか?

朝日ニュースター「ニュースにだまされるな!」×WEBRONZA提携

うさぎ 冒頭でもちらっと話に出ましたが、死亡した高齢者を届け出なかった問題とか、あるいは児童を放置して死なせてしまった虐待問題とかって、世間的な論調は何となく、親が悪いとか高齢者を放っていた子どもが悪いといった個人の責任、個人を責める感じで、他人事として「わー、こんな人いるんだ!」と驚いて終わる感じになっています。でも、この問題は、個人を攻撃することではまったく何も解決しないと思います。そもそもどうしてこういう事件が起こるようになったのか、ということを最初にお話ししていただきたいと思います。

金子 これから高齢者の所在不明問題や児童虐待問題を一つひとつ、なぜ起きたかを少しずつ議論していきますが、まず、突出した事例があまりにも極端なので珍しい事件だと思い込んでいますが、数的に見ても、ものすごく大きな社会問題です。例えば「老々介護」による殺人事件は2005~06年ごろから頻発していましたが、小泉政権は介護保険法改正(2005年)でどんどん悪い方向に持って行ってしまった。これは「悲鳴」なわけです。もし1つの殺人事件があるとしたら、その背後に老々介護で苦しんでいる虐待みたいなものが大量にあるはずだと想像しなければならない。今回の異様な事例は、それに近い事例が無数に存在していると考えるべきで、「これは社会的問題だ」という認識が大事です。

 もう一つ、福祉の行政が合わなくなっている、という(感じがします)。家族が壊れてきてしまっているから、多様な問題が出てきている。極端に言えば子どもの問題と老人の問題が同時に出てきています。今まで我々の国の福祉は、年金の計算でもそうですが、標準的な家庭がセットされているわけです。

うさぎ 何が「標準」なんでしょうか。

金子 夫がサラリーマンで妻が専業主婦で子どもが2人いて、みたいな。そうすると、最近の子ども手当でも問題になっているように、配偶者控除や扶養控除をあげて児童福祉を(手当て)するという考え方だと、サラリーマン以外の母子家庭の人はぜんぜん税金払っていないから(福祉を)受けられないし、夫がいないから配偶者控除が受けられないという問題が起きています。標準家庭、つまり福祉の前提となっている家族像が崩れたとしたら、個別の問題に対して、1人ひとりをどういう形でどういう単位にして福祉を組み立て直すのか、公的福祉の考え方を今までのような考え方じゃなくするにはどうしたらいいのかを考えなきゃいけない。昔は何でも施設にぶち込んでいた、というとちょっと表現が悪いけれど、老人病院、精神病院、児童施設に「措置」という名前でどんどん収容していた、ところがそれでは持たなくなってしまったわけです。

うさぎ それは施設が満杯になってしまったからですか。

金子 満杯にもなるし、財政悪化で経費ももたない。代わりに入ってきたのが「自立」です。小泉改革で、障害者に対する障害者自立支援法とか、契約とか保険とか申請主義とかいうのが行政の中にだんだん入ってきている。おまけに役所はどんどん小さくなって、公務員数が増えない状況になってきています。気がつくとかなり福祉の考え方が変わって、10年ぐらいたってみたら誰も掌握できない状態が生まれてしまったんじゃないかとぼくは思っています。

うさぎ 老人とか子どもの問題も、身障者も、とにかく自分たちで何とかして下さいということになってきたわけですね。

金子 「自己責任」ですね。

うさぎ 「個人の自由」とか「自立」という名の下にそうなってきた。ところが「自立」(の流れ)が、逆に、結果として(福祉の対象者を)追い詰めたりしている。

金子 あるいは、問題を放置してしまっているんじゃないか。

 こうした問題に詳しい方をゲストにお招きしているので、お聞きしたいと思います。最初に結城さんと品田さんに、高齢者問題に詳しく入る前に、大まかに言ってどういう流れの中で全体の問題が起きているのか、という点に対する考え方をお聞きしたいです。

結城 まず、今まで出てきた家族の話ですね。よく教科書に出てきますが、3世代世帯が極端にだんだんと減って、65歳以上の夫婦のみの世帯と単独世帯が増えています。このグラフは厚労省もよく説明するのですが、これに則って政策をぜんぜんやっていない。市役所も県もこういうデータをよく出すのですが、これに則った仕事をしないで、あとはボランティアや地域に頼んで頑張りましょうということになっていて、ある程度は大事だと言いながら実質、公的責任を果たしていません。このグラフをまず頭に置いてから話をしていったほうがいいですね。

拡大

金子 単独世帯というのは単身、一人暮らしですよね。一人暮らしの老人もいれば、結婚しない若い人もいれば、母子家庭じゃないにせよ離婚した女性とか、いろいろパターンがありますよね。

結城 実は、若い人も当てはまります。結婚していない人たちとか、離婚した人とか、これは年寄りだけじゃないんですよね。

うさぎ シングルマザー、子どもがいて2人以上の世帯のシングルマザーは、単独世帯に含まれるんですか。

結城 シングルマザーは違いますね。客観的に今の福祉現場では、児童も高齢者もそうですが、まず地域が非常に弱体化していると言えると思います。昔だと怖いおじさんやおばさんが(近所に)いたので(子どもを虐待したり高齢者を放置したりしていると)怒られてしまう、あるいは「いやなヤツ」だと排除されてしまう。民生委員や見守りの人たちが後継者不足になっています。

金子 (テレビの)インタビューに出てくる町内会の民生委員を見ると、60代とか70代の人が多いんですよね。

結城 今だいたい75歳ぐらいで、70~80代の人が主力メンバーですね。

金子 昔あった町内会の見回り機能が弱くなっていて、マンションができるとまったく中に入れない。

結城 地域や家族の機能が減ったとして、公的な公務員はどうか。まず公務員を削減する、それから市町村を合併して見守りの公的な「パブリック」の範囲を広くしてしまう、パブリックが非常に減退しているのが現実です。確かに、公務員は仕事しない無駄な部署はいっぱいあるのでそれは削減すべきですが、むしろ福祉とか医療関係は増やしていかなければならないのに、そこも一緒に減っていくのは大きな問題です。

金子 地方都市で、例えば静岡の周辺が合併してわーっと大きな自治体になると、市街地以外のところもカバーしないといけないのに、行政としてはスリム化を図ろうとしますね。

結城 しかも現場を見ていると、市町村合併したことによって、町とか村にそれまであったコミュニティをぶっ壊してしまったという現実もあります。合併が福祉に対してどういう影響を与えたのか検証しなければならないと思います。

拡大

 三つ目は行政サービスの問題です。戸籍不明問題、身元不明問題もそうですが、ほとんどが家族の申請主義に基づいていて、サービスは申請しないと受けられない。困っている人がいても、行政から働きかけるものも児童相談所などありますが、「来たらサービスを出す」という風習がまだあって、「あとは福祉は契約なんだから契約でやって下さい」という流れがあります。

 四つ目は、2000年の社会福祉制度の基礎構造改革もそうでしたが、日本は豊かな社会になったから福祉は民間の競争原理でやればいい、と言っています。確かに1990年は豊かな社会でしたが、20年たったら貧富の差が激しくなってしまいました。もう一度、福祉サービスのあり方を考えるべきだと思っています。

金子 品田さんはどうでしょうか。

品田 私は、古い昭和ぐらいの家族を考えているので、そもそも再建するほどの「いい家族」が昔あったのか、という点が疑問です。

金子 なるほど。壊れたから昔に戻ればいい、と言うけれど、昔もそもそも再建に値するような家族があったのか、というわけですか。

品田 現場の理想としては「家族主義への回帰」が言われますが、でもそれは期待と理念であって、現実に行き届いたことがあまりなかったという風に見えます。

金子 実は問題は放置されていた、変わらなかった、と。

品田 ただ最近、ひとり親が増えたこと、高齢者の寿命が延びてケアの水準が上がったことで、問題がはっきり出てきた、昔だったら放置されたものが問題化した、と考えています。

金子 言葉は悪いけれど、「姥捨て山で平気」だった行政が当たり前の時代から、ちゃんと1人ひとり守らなければならない、と行政の期待水準が変わった。ところが現実はそこまで追いついていないということですか。

品田 そうですね。制度が追いついていないということだと思います。

うさぎ 私も、家族の崩壊とか、きずなの希薄化という話が出るたびに、昔に戻ろうというおじいちゃん・おばあちゃんと同居したサザエさん家のような家族を取り戻すべきだ、という議論が必ず出てきますが「それはどうなの?」と思います。昔に戻る必要はないし、家族の形態がどのように変わっていったか、そこに行政が合わせていくほうが現実的なんじゃないかと思います。今、品田さんがおっしゃったことは本当にそうだなと思います。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。