倉沢鉄也
2010年11月16日
スマートフォンで出遅れたという日本のメーカーは挽回できるのか。結論は易しい。買い手にとってよいものを作れば勝てる。よいものが作れなければ負ける。そして日本市場に限れば、勝つか負けるかと言えば、勝てる。
そう言い放った上で、本来は、「スマートフォン」とはどこからどこまでか、何年何ヶ月「出遅れ」てそれが重要な遅れなのか、昨今失った何を「挽回」するのか、「日本のメーカー」の勝利をとは言うが、合弁もあり現地生産もありで何が日本経済にとってよい状態なのか、などをきちんと分けて議論する必要があろう。関税や制度面の政策的支援も必要かもしれないが、総務省や経産省は政策的支援を強めるということでは特段ない模様だ。こと端末の競争に関してはすでに自由競争に限りなく近い市場であり、現実にiPhoneの販売は日本国内で200万台を超え、日本のメーカーも加わって現在10機種程度のスマートフォンが発売されている。
似たような流れで、iPodがポータブルメディアプレイヤー市場を圧倒し、室内や車内のオーディオコンポも(他のメーカーでなく)汎用のUSBソケットでなくiPodの独自規格ソケットのほうがベーシック機種の仕様になりつつある。10年間で外国資本の1商品ブランドにシェアの過半数をとられ、国際競争力を憂う人々としてはこちらの市場にこそ頭を抱えるべきであろうが、それはアップルの諸々のビジネス戦略以前に、買いたいと思わせる商品の魅力と、買ってからのライフスタイルが変わった感覚の醸成と、そして意外に安い価格が、過去の王者ソニーを上回ったに過ぎない。買い換えさせようと思ったときに会員プラットフォームと独自のデジタルフォーマットにユーザーが拘束されてズルい、というのは、敗因分析を間違っている。日本人にとってのポータブルメディアプレイヤーの理想像を、主にソニーが10年間も打ち出せていないことこそ深刻だ。
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