澁谷知美
2010年11月26日
毎度、編集部のネタふりにたてつくようで申し訳ないが、まずは、『朝日新聞』10月31日の速水健朗氏の書評をもとに書かれたとおぼしきリード文「東方神起〔中略〕は日本で育った」へのツッコミから。
「韓国やアジア圏での東方神起の人気は、日本が育てた」ということを意味しているとしたら、事実誤認である。東方神起は、2004年の韓国でのデビュー初年度に日本の約197万枚に匹敵する76万枚の音楽ソフトを売り上げ(「YONHAP NEWS」2006年11月14日)、あらゆるチャ-ト番組で何度も1位を獲り、各局の歌謡祭で賞を総ナメにし、サムスンほか大手企業のCMに出演して、韓国での人気を不動のものにした上で2005年4月に日本デビューしている。また、韓国・日本以外のアジア圏と、日本で人気に火がつくのに、大きな時差はない。「韓国やアジア圏での東方神起の人気は、日本が育てた」というのは、たんに間違っているのみならず、韓国の手柄を日本のもののように書く点で「大日本帝国」的だ。
「日本での人気は日本が育てた」という意味なら、何もいっていないのと同じ。日本で人気が出るよう日本のレコード会社がアーティストを育てるのは当たり前だからだ。
こうしたツッコミどころのある記事が出回ることも含めて、今、K-POPブームなのだろうな、と思う。これまでK-POPに見向きもしなかった大メディアがK-POPを取りあげている。先日はNHKの『クローズアップ現代』が特集を組んだ(2010年11月16日。ただし未見)。誰もがK-POPに魅了され、語りたがっていることを実感する。
一方でこうも思う。今ある流れは、本当にK-POPブームなのだろうか? 私たちが享受しているのは、マイルドな韓国料理のように、日本人向けに味付けされた〈K-POP〉なのではないだろうか? 「K-POPはなぜ日本ではやるのか」というお題の前提そのものを疑うべきではないだろうか?
というのも、
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