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「取り調べ一部可視化」は検察の骨抜き策

魚住昭 魚住昭(ジャーナリスト)

これは検察の罠だ。3日付毎日新聞の朝刊1面トップの記事を読んでそう思った。「特捜一部可視化へ 最高検が最終調整」という見出しで、最高検が年内に公表する検証結果の中に、特捜部の事件で取り調べ過程の一部を録音・録画(可視化)する再発防止策を盛り込む方向で最終調整していることが分かったという内容だ。

 この毎日の記事によると、可視化の範囲については議論が続いているが、容疑者が自白した経過や取り調べ状況を供述する場面を記録したDVDを法廷で再生し自白の任意性の立証に役立てる裁判員裁判の手法を取り入れる案が有力視されているという。

 つまり最高検は、容疑者本人の取り調べ過程の一部だけを録音・録画するという姑息な手段で先手を打ち、民主党の議員連盟が準備中の「緊急可視化法案」(特捜事件の全面可視化を打ち出している)を骨抜きにしようとしているのだろう。

 こんなごまかしを許してはいけない。取り調べ可視化は、容疑者本人はもちろん参考人にいたるまで全過程を録音・録画しなければ何の意味もない。容疑者本人だけの、しかも一部だけの可視化は、逆に不当捜査の隠れ蓑になってしまう。

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筆者

魚住昭

魚住昭(うおずみ・あきら) 魚住昭(ジャーナリスト)

ジャーナリスト。1951年、熊本県生まれ。一橋大法学部卒。75年、共同通信社入社。社会部記者として87年から司法クラブに在籍しリクルート事件などを取材。96年退社。司法分野や人物フィクションの執筆をしている。著書に『特捜検察』『渡邉恒雄 メディアと権力』『特捜検察の闇』『野中広務 差別と権力』(講談社ノンフィクション賞)など。2014年6月、WEBRONZA筆者退任

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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