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やんちゃさへの好感と選別なき公開の危険

武田徹

武田徹 評論家

内部告発には正義がある。組織が腐敗し、自浄作用が望めなくなった時、それを改善するにはガバナンスを外から内部に及ばせるしか途がない。そのためには内部に巣くった問題を外部に知らせる必要がある。

 その際、告発先の候補としては警察、検察など司法権力が真っ先に挙げられよう。そしてマスメディアも候補となる。司法と違って組織内部の腐敗に直接にメスを入れることはできないが、マスメディアは世論を喚起して組織に是正を迫ることができる。

 しかし内部告発の受け皿として機能するためには司法やマスメディアの側にも資格が問われる。すなわち内部告発された内容が真実かどうか見極め、またその是正が公益にかなうかどうか判断する能力が必要だからだ。

●ウィキリークスと真実性、公益性

 話題のウィキリークスに関しても、それが内部告発の受け皿となり、情報公開メディアとして機能するかを考えるために、真実性、公益性を正しく吟味する能力があるかチェックしなければならない。

 ウィキリークスの実体は詳らかになったわけではないが、活動予算は年間60万ドルで、フルタイムのスタッフが5人程度だと言われている。この限られたスタッフがどの程度の練度を有しているか、限られた予算の範囲で真実性の検証がどこまでできるのかは分からない(もちろんフルタイム勤務のスタッフ以外にも800人とも1000人とも言われるパートやアルバイトに加えてメディア関係者も含まれるボランティアの支援体制が敷かれているとも言われるが、外部スタッフも動員する場合には機密性の確保が困難になるだろう)。

 とはいえ人員、予算の制約の結果として真実性のチェック体制が必ずしも十分でないとしても許される状況がある。多くの人が情報に直接アクセスし、訂正を要求したりできるネット時代に至って、真実性の判断は情報公開後に「みんなの目」で行うことが可能だし、そうした社会的検証能力の向上は望ましい。もちろんリークされた情報をそのまま真実として鵜呑みにし、いたずらに風評被害を広めない「メディアリテラシー」の幅広い共有が前提条件とはなるが、以前と異なって内部告発の受け皿メディアがチェックの全責任を負わなければならない必要は相対的に減少している。

 だが、

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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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