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まじめなイタリア人の英断、選手も一人前になった

潮智史

潮智史 朝日新聞編集委員

 2022年ワールドカップ(W杯)開催国のカタール・ドーハを舞台にしたサッカーのアジアカップが終わった。4年に一度、アジア王者を争う大会で、日本は2大会ぶり単独最多となる4度目の優勝を手にした。3週間に及ぶ戦いぶりから改めて見えてきたのは、昨年のW杯が残した「遺産」の大きさである。

 日程的に、日本は厳しい戦いを強いられていた。12月4日にJリーグが終わり、恒例の元日決勝まで天皇杯全日本選手権が続いた。日本代表チームの年末の大阪合宿には満足に選手が集まらず、ドーハに直接入った欧州組を含めて、全員がそろったのは大会直前だった。Jリーグでプレーする選手の場合なら、新しいシーズンを前にしたつかの間のオフの時期に試合に臨むための体調管理を強いられた。しかも、選手によってコンディションはばらつきがあった。ザッケローニ監督が「我々は体力面のコンディション調整の部分で後れをとっている」と繰り返したのも無理はなかった。

 ザッケローニ監督が強化試合を断念して、コンディション調整を優先させたのは英断だったと思う。同時に、チームとしてすり合わせをする時間の少なさから新しい戦術を植え付けるとか、新しい布陣を採用するとか、大きな変化をチームに持ち込むことをしなかったのも奏功した。

 監督という人種は、自分の色をできるだけ早く出したがるものだ。代表チームなら選手を大幅に入れ替えたり、前任者との違いを強調したりするもの。イタリア人監督は就任してから半年近くたついま、まだ自分のスタイルをチームに当てはめるようなことはしてはいない。W杯でベスト16に入った流れを尊重して、その遺産をごく自然な形で受け入れている。

 もうひとつ、W杯がチームに残したのは代表選手のスタンダードを一気に引き上げたことだ。

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