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「伝統木造構法」復権に匠の知恵を生かそう

野呂雅之

野呂雅之

「伝統木造構法」の民家が地震の揺れにどう耐えるのか。実物大の家を揺らす実験が兵庫県三木市にある大型振動台「Eディフェンス」であった。

 実験に使われたのは、伝統構法で最も重要な特徴の「石場建て」による民家だ。石の基盤の上に柱脚を置くだけの建て方だが、この実験にこぎつけるまで実に3年近くもかかったのだった。

 伝統構法をめぐっては、国土交通省が2008年度から設計法づくりに乗り出した。設計法の検討委員会が設けられ、大学の研究者のほか、大工棟梁(とうりょう)や建築士も加わって実務者の意見を反映させるはずだった。

 ところが、その委員会の委員長は伝統構法に批判的な学者が務め、石場建てに後ろ向きな研究者らが委員会を主導して、肝心の石場建てによる設計法が見送られそうになった。

 そうした問題は国会で取り上げられ、当時の馬淵澄夫国土交通副大臣が「構成メンバーに問題があり、中立的なバランスをもってすべきだ。検討委員会をしっかり見直す必要がある」と明言。昨春にメンバーを入れ替え、新たな委員会で臨んだのが今回の振動台実験だった。

 その実験に触れる前に、伝統構法とはどんな家づくりなのか見てみよう。

 木造の家を建てる際、住宅メーカーの大半が採っている在来軸組構法は合板や筋交いを使って壁の耐力を増やし、揺らさないように造る。壁量計算という手法で容易に建築基準法をクリアできる。

 そんな現代構法の根底にあるのは、人間の技術で自然を征服しよう、地震力を技術で押さえ込もうという発想だ。

 一方、伝統構法は自然には勝てないとの考えに立ち、地震力をやりすごす柔構造に工夫が凝らされている。

 柱と横材でジャングルジムのような立体格子をつくり、地震の力をその構造の中に受け入れて、揺れながら地震力を分散し吸収する。土壁は揺れを抑えるが、限界を超えたら壊れて衝撃力をそぐ。

 激震に襲われたら、石の基礎の上に置くだけの柱脚がずれたり浮き上がったりして、地震の揺れが地盤から建物に伝わるのを遮る。これが石場建ての構法だ。

 匠(たくみ)の知恵を生かして、住む人の命を守ろうというのが伝統構法である。

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筆者

野呂雅之

野呂雅之(のろ・まさゆき) 

朝日新聞論説委員。1956年神戸市生まれ。産経新聞社を経て1991年入社。社会部で主に司法、経済事件、公害・環境問題を担当し、阪神大震災をきっかけに自然災害を中心とした「防災」にも取り組む。奈良・神戸総局デスク、大阪・東京社会部デスクなどを務め、2004年から現職。取材班による共著で『地球サミットハンドブック』『イトマン事件の深層』など。

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