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東海テレビ制作の映画「平成ジレンマ」の試み

川本裕司

川本裕司 朝日新聞記者

名古屋の放送局・東海テレビ(フジテレビ系)が制作した映画「平成ジレンマ」が、名古屋と東京(東中野)で公開されている。戸塚ヨットスクールに密着取材しドキュメンタリー番組(71分)として昨年5月に放送したあと、再編集して劇場版(98分)として有料で上映された。番組視聴者が限られる地方局が、映画の世界に踏み出し、新たな表現の場を獲得しようという試みである。

 「平成ジレンマ」は斉藤潤一監督、阿武野勝彦プロデューサーという東海テレビ社員のコンビで制作された。二人は「重い扉~名張毒ブドウ酒事件の45年」「裁判長のお弁当」「光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日」と近年、司法をめぐるドキュメンタリーで他の追随を許さない水準の作品を発表しつづけている。

 冤罪、裁判官、弁護士、犯罪被害者、検察官とつづき、(元)被告としての戸塚宏氏を追っている。1976年に戸塚ヨットスクールを開校、翌年から情緒障害児の受け入れを始めた戸塚氏は、訓練生の死亡・行方不明事件で体罰が原因だとして、傷害致死容疑で逮捕され、懲役6年の実刑判決が2002年に確定した。06年に静岡刑務所を出所、再開されていたスクールに校長として復帰した。

 東海テレビの取材チームはヨットスクールにカメラを据える。ひきこもりやニートが多く25歳以上が6割を占める訓練生10人の生活を撮影する。体罰を封印したスクールで倒れやすくしてあるヨットの操縦の練習、宿舎での勉強、就職や独り立ちの活動。外部からは見えない訓練生の素顔とコーチとの関係も丁寧に記録していく。リストカットを繰り返してきた不登校だった17歳の少女は、3つ年下の少女と仲良くなるが、入校3日でスクール屋上から飛び降り自殺してしまう。スクールで営まれた葬儀の映像は、現代の教育から目を背けないという制作者の意思の表れに思えた。

 ただ、

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