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リアルな活動の便宜としての実名主義

武田徹

武田徹 評論家

世界で6億人のユーザーを擁し、なお成長の勢いを緩めないフェイスブック。その規模を喩えて「中国、インドに次ぐ人口」だとよく言われる。

 しかし、そう聞くと多少の違和感を禁じ得ない。少なくとも日本ではフェイスブックがそれほど巨大なソーシャルネットワークサービス(=SNS)だという実感がまだ伴わない。雑誌記事や関連書籍は氾濫気味だが、フェイスブックの時代が来るとしたらそれはこれからの話だろう。

 果たしてフェイスブックは日本でも今後定着して行けるのだろうか。二つのポイントを上げて議論しておきたい。ひとつ目はしばしば語られる実名問題だ。そして、もうひとつは、これもフェイスブック評としてよく耳にする「分かりにくさ」「使いにくさ」である。

 まず実名問題について。個人的には議論が錯綜していると考える。確かにフェイスブックは実名登録が基本だと謳っており、そこが日本のSNS文化に適さないのではないかと指摘されることが多い。だがフェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグの過去の発言を辿って行くと「誰もがひとつだけのアイデンティティで発言する、裏表のない、透明性の高い情報化社会こそが健全なのだ」と述べており、必ずしも本名の使用に言及しているわけではなく、むしろ「なりすまし」や、複数アカウントを使い分けて議論を自作自演するような使用法を回避したいという点に力点を置いた主張となっている。

 それはザッカーバーグがフェイスブックをどのようなSNSとして発展させたいかというビジョンとも関わっているのだろう。ネット上に「ひとつだけのアイデンティティ」で存在し、そのアイデンティティの下に可能な限り多くの個人情報を開示しておいた方が、ユーザーはネットからの多くの現実的便宜を得られる。たとえば ・・・ログインして読む
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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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