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ザッカーバーグの二つの顔

川本裕司

川本裕司 朝日新聞記者

 ハーバード大生の高慢さをひけらかして他大学の女子学生に嫌われた腹いせに始めたハーバード大の女子学生の品定めソフトが「フェイスブック」のきっかけだった――。

 アカデミー賞の8部門にノミネートされた映画「ソーシャル・ネットワーク」は、フェイスブックの創始者であるマーク・ザッカーバーグを、いけすかないオタク青年の主人公として描いている。

 頭は切れコンピューターの技術に秀でてはいるが、学内で話題を呼んだソフトをつくる動機は下劣だし当然でてくる反発にもしれっとしている。隣人にはあまりしたくないないようなお騒がせの若者だ。

 映画は、フェイスブックのアイデアの原型を出したのは誰かをめぐる裁判を軸に進む。ザッカーバーグの腕を見込んで声をかけた裕福な双子の兄弟、一緒にサービスを立ち上げた親友とそれぞれ争うようになり、和解金を支払って裁判に終止符を打ち、ザッカーバーグは事業に邁進していく。

 恋人はいるのか、といった若者の関心事を自らのプロフィールに表すフェイスブックは、学生のノリで流行し他の大学にも広まっていく。インターネットの普及に若者の感性を生かし、起業した会社を大成功させるといった実話は、21世紀のアメリカンドリームである。この実話を冷めた目で皮肉っぽく描いたからこそ、この映画は注目を集めたといえる。

 一方、元フォーチュン誌記者のデビッド・カークパトリックが書いた「フェイスブック 若き天才の野望」(日経BP)は、ザッカーバーグの成功譚である。

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