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日本メディアビジネスの、終わりの始まり

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

国勢調査とメディアビジネス。日々の儲けに直接関係がないと思っているビジネスプレイヤーは、6500万年前の恐竜と同じ程度の見識だ。小惑星激突のような唐突感なく、総人口は減少に向かい、高齢者人口比が増え、その高齢者たちによる単身世帯数が増えたことは、多くの人に知られている。あと5年もすると総世帯数も減少に向かうこと、核家族世帯比率や「夫婦と子どものいる世帯」の割合は1980年代から一貫して減少していること、などは少し勉強した大学生なら知っている。

 アップルもグーグルもフェイスブックもさざ波に過ぎない。この数年間の不況の波は大きいが、この波の規模はもっと大きい。メディアビジネスに一定の見識を持つ方々なら10年前、20年前から百も承知のことだ。この国勢調査の結果とは、日本のメディアビジネスの終わりの始まりを意味している。終わりとは、競争による淘汰ではなく、市場全体の静かなる縮小であり、高コスト高収益に支えられたビジネス構造の終わりである。

 物事は単純だ。メディアビジネスの収益方法は、広告・コンテンツ課金・伝送路課金、の3通りとその組み合わせ以外、事実上存在しない。そのすべてが、人口減と世帯数減(主たる収入を得ている人の家族世帯の減少)によって縮小すると言っているだけのことだ。

 以下、多数の変動要素をすべて省略してごく単純に説明する。例えば視聴率20%の番組に入る広告は、総世帯が半分に減れば、半分の数の世帯にしか届かないので、売上は半分に減る。だから広告媒体の金銭的価値は半分に落ちる。マスメディア、ネットメディアのみならず、チラシ、交通、屋外などすべての広告メディアの市場は半分に縮小する。

 コンテンツ課金、例えば電子書籍や音楽ダウンロードは、ターゲットとする人数が半分に減れば、いくら人気を博しても売上は半分強まで減る。コンテンツ課金の多くの品目は家計からでなく小遣いからの支払で買われてきており、小遣いを持てる年代の人口が半減してしまえば、いくら消費経済(GDPの6割)が復活しても立ち直らない。

 伝送路課金(ケータイの通信料金など)は、近年、唯一伸び続けてきた。ケータイの普及の飽和やARPU(1人あたり月額支払額)の低下が続いてもなお伸びている理由は、家族割引や光ファイバーとの包括割引など、家計から支払われる仕組みに踏み込んだ(小遣い払いから脱した)ことが大きい。しかし ・・・ログインして読む
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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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