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ネット流出は寝耳に水だったヤフー

川本裕司

川本裕司 朝日新聞社会部記者

ヤフージャパンの広報担当者が、「ヤフー知恵袋」への入試問題ネット流出を知ったのは2月26日の午後9時半ごろ。面識のない読売新聞大阪本社の記者から携帯電話の留守録にかかってきたのが始まりだった。「京大入試問題の件で……」。ネット投稿が明るみに出た京大からの連絡は、この日なかった。

 広報担当者はヤフーニュースに「京大入試の試験中、問題をネット掲示板に投稿」が午後9時37分に第一報が流れたのをパソコンで確認。1時間ほどして、主要ニュースを掲載する「ヤフートピックス」の担当者から、入試問題ネット投稿の原稿を出稿する、という連絡を受けた。午後11時1分、京大入試での試験中のネット投稿という記事が取り上げられ、翌27日午前7時49分まで掲載された。

 ヤフー知恵袋は、登録会員が出す質問に別の会員が回答するQ&Aサイトだ。月間の利用者(ユニークユ-ザー数)は約100万人。昨年時点で、1日あたり5万件の質問があり、12万件の回答が寄せられていた。

 質問数を分野別に並べると、アイドルやテレビ出演者などの話題が中心の「エンターテインメントと趣味」、料理のレシピが人気となっている「暮らしと生活」、パソコンや家電などの「電気製品」となっている。

 家庭での悩みや同性愛といったテーマについて、本音でのやり取りもかわされる。ただ、これまでカンニングに利用されたという報告はなかった。

 ID番号とパスワードの基づいたハンドルネームが使われる。このため試験中に入試問題を投稿していた「aicezuki」は同一人物ということになる。別のハンドルネーム名をかたることはできない。

 投稿者aicezukiの割り出しは、警察の強い要請を受け、ヤフージャパンが投稿時に使われたIPアドレスのほか、ヤフー知恵袋のID番号、パスワードを提出。携帯キャリアのNTTドコモの協力を得て、投稿で利用した携帯電話の特定に成功した。

 これまでの警察の調べでは、逮捕された予備校生は、携帯を左手で股の間に隠し持って入力していた、と見られている。席が試験会場の烈に左隅だったことを利用し、試験監督者の死角で携帯を捜査していたようだ。いわば、携帯を使ったカンニングとしては初歩的な手法といえる。

 今後、情報端末はより小型になり、機能もより高度になるのは間違いない。想定できないような端末の使い方で、監督者の目をかいくぐってカンニングする不届き者が出てくるかもしれない。

 足がすぐつくような形で投稿を繰り返したaicezukiに、ITに関する知識の深さはうかがえない。「ネットリテラシーを磨け」という主張は多いが、的を射ていないと思う。 ・・・ログインして読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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