魚住昭(うおずみ・あきら) 魚住昭(ジャーナリスト)
ジャーナリスト。1951年、熊本県生まれ。一橋大法学部卒。75年、共同通信社入社。社会部記者として87年から司法クラブに在籍しリクルート事件などを取材。96年退社。司法分野や人物フィクションの執筆をしている。著書に『特捜検察』『渡邉恒雄 メディアと権力』『特捜検察の闇』『野中広務 差別と権力』(講談社ノンフィクション賞)など。2014年6月、WEBRONZA筆者退任
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
魚住昭
07年当時、小堀さんは枚方市の大型プロジェクト(清掃工場・火葬場建設計画)の担当責任者だった。このプロジェクトは、談合捜査のエキスパートといわれた現職警部補(大阪府警捜査2課)の指導を受けながら進められた。談合などの不正行為を防ぐためだ。
ところが同年5月、当の現職警部補が裏で大手ゼネコンと結託し、工事受注の見返りとしてゼネコンから1千万円を受け取っていたことが大阪・特捜の調べで分かった。
警部補は談合容疑で逮捕され、彼の「引っ張り込み供述(自分の罪を軽くするため他人を共犯として巻き込む供述)」をもとに小堀さんが2日後に共犯として逮捕された。
「お前もカネを受け取っているはずだ。くず野郎! ごみ野郎!」。否認する小堀さんに検事は罵詈雑言を浴びせた。さらに小堀さんの椅子を何度も蹴った。椅子はコンクリート製の机にぶち当たるたびに轟音を立て、キャスターが壊れて使い物にならなくなった。
小堀さんには腎臓が片方しかない。そのため小刻みな水分補給が必要だったが,水を飲ませてほしいと言っても、検事は1度も聞き入れなかった。そのうえ小堀さんは前立腺肥大症で排尿障害があり、近々手術をする予定だった。しかし、拘置所では薬ももらえず、過度のストレスもあって、逮捕から4日目には尿が完全に出なくなった。
医務室で排尿用のカテーテルを挿入されたが、その処置の不具合で尿道と膀胱に傷がついて出血し、下着が赤く染まった。そのため介護用のおむつをし、細菌感染による発熱・尿漏れに苦しみながら、カテーテルを挿入したまま取り調べを受けた。
深夜、検事の怒声は拘置所の外まで響き渡った。近隣住民から「うるさくて眠れない」という苦情がきて、刑務官がそれを取調室に伝えにきた。だが、
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