朝日新聞宮古支局長(岩手県)。1960年生まれ。88年入社、名古屋、東京社会部などを経て、05年から論説委員(名古屋在勤)。名古屋報道センター員兼論説委員を経て、11年6月から現職。東海3県の行政、事件、裁判関係の論説記事を担当。水問題を中心とする環境、自殺問題などについても執筆。共著に『ドキュメント官官接待』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
伊藤智章
ただ、先日発表された警察庁の昨年の自殺統計そのものは、長いトンネルからの転換の兆しを感じさせるものだった。
3万1千人台は9年ぶりだった。34都道県で前年比減少した。人口10万人当たりの自殺者が高かった東北6県が軒並み下がった。全国でもっとも減少率が大きかったのは、三重県の25%減、次いで青森県の17%減だ。一方、前年比で増えているのは、13府県。香川県の10%増、滋賀県の9%、石川県の8%の順だ。これらの県は、自殺率がむしろ平均より低い。東北ほどの関心事でないことが、対策の遅れを招いていないか、気になるところだ。これらの増加府県には、ぜひ施策の見直しをしてもらわなければいけないと思う。2006年の自殺対策基本法で、自殺は個人の問題ではなく、対策は国、自治体の責務、とされている。
大都市部は横ばいだった。東京都は前年より36人少ない2953人、大阪府は31人多い2070人だった。ともに若年人口が多い分、やはり全国平均より自殺率は低い。とはいえ、世界レベルでは異常な数字だ。東京の自殺率は、米国の2倍なのだ。
もちろん孤族とまでいわれるこの時代、とりわけ都市部での自殺対策は、スローガン倒れになりがちだ。
でも都市部だからこそ出てくる発想もある。「自殺対策に取り組む僧侶の会」(東京)は、宗派を超えた44人の僧でつくる。代表は、藤澤克己さん(49)。近年の自殺対策強化に大きな貢献をしているNGO、ライフリンクの元事務局長だ。実家の寺を継ぎ、4年前に結成した。
ただ、
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