速水徹
2011年03月23日
常識的な判断能力がなぜ、この人たちにはないのだろう。迷走を続けるプロ野球セ・リーグの動きを半ば、ぼう然としながら見つめている。
東日本大震災の余波が続く中、公式戦の開幕時期をどうするのか。逼迫(ひっぱく)する電力問題には、どう対応していくのか――。セ・パ両リーグがそれぞれに取った対応は、好対照を描いた。
スピーディーでかつ、合理性があり、世の多くの人々が納得できる決定を下しているのは、間違いなくパ・リーグだ。
被害が甚大だった仙台市に本拠を置く楽天が属しているリーグである、という事情があるのはもちろんだが、未曾有の事態にプロフェッショナル球団としてどう臨むか、という「哲学」が、パのオーナー陣にはある。
パのオーナー会議議長を務める楽天の島田亨オーナーは、こう明言している。「被災した人々への心情を最優先とし、政府からの要請を最大限に配慮しながら、極めて厳しい条件の中でも公式戦144試合とクライマックスシリーズ(CS)を守る」。まさに、取るべき道が、この言葉に尽きている。
セが当初予定の25日開幕にこだわる一方で、パは早々と開幕を4月12日に延期することを決めた。公式戦全試合とプレーオフのCSが実施可能なぎりぎりの日程だ。関係者の多くが納得できる、極めて妥当な決断だと言える。
その後、監督官庁の文部科学省から「東京電力・東北電力管内以外での地域で試合を開催するよう、可能な限りの努力をお願いします」「特に、東京電力・東北電力管内の地域では、夜間に試合を開催することは厳に慎むようお願いします」とする要請が加藤良三コミッショナー宛に出されたときも、対応は機敏だった。臨時オーナー会議で、両電力会社管内で実施予定だった4月中のナイターをすべて、デーゲームに変更することを決めたのだ。明瞭かつ、速やかな判断。これも「哲学」があればこそ、だ。
一方で、決定を泥縄式でころころと変え、世の中の心情から遠く離れた判断をし続けているのがセ・リーグである。
震災直後は25日の開幕を動かさない、という判断をした。だが、
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